Tundra Swan (FE108NS向け) を調整する

Fostex FE108NS の高い能力を活かすためのバックロードホーンを考えるシリーズの一環として専用にスーパースワンをマイナーチェンジするという畏れ多いことをして生まれた ‘Tundra Swan’。今回はそのチューニングの過程をご紹介する。

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ヘッド部の調整

 立方体形状のヘッド部を空気室としてユニットが取り付けられ、そこから長い首をスロート部とし、ボディ部のホーン部〜ホーンマウスへと展開していくこの形式のバックロードホーン。完成後に調整可能なのはヘッド部と開口部だ。ネック部分を着脱可能にしておけばスロート全部とボディーの入口部分も調整可能になる。
 あまりたくさんの箇所を調整すると効果の因果関係がわかりづらくなるので、まずは空気室を調整する。完成当初に聴いた時は【FE108NS 向けの “スワン” の構想と制作】にも書いたとおりユニットからの音が少し元気過ぎるように感じられ、ヘッド部(空気室)の調整が必要なように思われた。通常 FE108-Sol を D-101S で使用する場合にはヘッドの背面部分を覆うくらいの面積に 8.5kg/㎥ くらいのポリエステルのろ過マットを10〜15mm 厚くらいに調整して使用していた。表裏があるため、パリッとした面を表にする。
 最初から細かい調整をしてしまうと変化が分かりにくいため、商品そのままの状態で 20mm厚 を背面を覆うサイズにカットして入れる。完成当初はデッドな環境ではこのくらいでちょうど良い。

 Tundra Swan を別のライブな環境で試聴するにあたっては極端に調整してみた。約18.8kg/㎥ のろ過マットを 20mm 厚で使用。質量では3倍弱と大きな違いだ。デッドな環境(当試聴スタジオ)では高域の切れ味が不足するがライブな環境では違和感を感じないだろう。ということで持ち込んでみたところ全体的なバランスは良好。しかしユニットが大人しくなり過ぎてエンクロージャーの木の響きが少々目立つ印象だ。これはこの Tundra Swan がシナ合板の無塗装状態の個体であることもあるかもしれない。部屋や塗装状態、用いる木材やもちろんお好みによっても調整状態は変えるのが良い。

ライブな部屋での試聴(写真はスーパースワン)

開口部の調整

 開口部は 1mm 厚フェルト(と言ってもポリエステル100%)を敷く。デッドな環境であればこのくらいで良さそうだ。これは無しでも良い。ライブな環境だと2枚重ねなど工夫しても良い。ここも環境やお好みで調整すると良い。

組立直後の試聴

室内音響変化後、吸音はゼロに

 その後試聴スタジオ内にディフューザーが入ったことにより、響きが大きく変化。スピーカーそのものから「余計な音がするな…」という感じが少なくなる。ディフューザーを入れるまでは余計な音をやわらげるのと、寂しい音になり過ぎないようにするというチューニングのバランス調整が難しかった。ディフューザーを入れてからは響きを多めにしても問題がない。むしろ比較的「鳴らし気味」にした方が音の豊潤さが出てきて気持ち良い。
 どんどん吸音材を取り外していった結果、吸音材は全て取り払うことに。それでも余計な音はせず、一方で鳴りっぷりは良く切れ味も良い。ライブな環境で使用するときや製作したての頃はヘッド部を中心に何らかの調整を施す必要があるかもしれないが、Tundra Swan は基本的に「吸音材ゼロ」を基準に考えられる。
 FE108NS 独特の滑らかでありながら切れ味のある中高域、芯があり過不足のない低音。 FE108NS の力を十分に味わうことができるエンクロージャーとなった。現在もスタジオにて試聴可能なので、気になる方はご試聴をどうぞ。板材カットサービス、完成品やユニットの販売も可能です。

 ディフューザー設置時のようす(スピーカーは 16cmフルレンジバックロードホーン)

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