おかげさまでバックロード設計・制作のお仕事をたくさん頂いております。エクスペリエンス・スピーカー・ファクトリーではお客様それぞれの具体的ご要望に沿った設計・制作を行うお仕事はもちろん、お客様の発想の源泉になるような「サンプル」としてのプロジェクトもそれとは別に同時進行しています。これらのプロジェクトは随時こちらのブログでも公開しているので繰り返しになるのですが、今回はそうした「サンプル」プロジェクトについてのご紹介です。
20cm バックロードが人気
ホームスタジオのバックロードのレファレンスとして活躍している XP168BH + FE168NS 。16cmフルレンジによるバックロードホーンです。なんだかんだで 16cm のシステムよりも 20cm のシステムが売れるのはこの弟分が活躍しているからと考えています。
バックロードをご検討の方にはこの 16cm のモデルや 10cm のモデルの D-101S(スーパースワン) をよく聴いていただくのですが、ホームスタジオに 20cm バックロードはありません。お客様は 10cm と 16cm の違いを試聴して、その違いから 20cm の音を想像して選択されるということもあるですが、どちらかと言えば私がお勧めしていることが理由かもしれません。ここ最近私自身が 20cm バックロードの傑作を聴く機会が立て続けにあり、お勧めしたくなってしまうのです。
ホームスタジオに 20cm バックロードも置きたいところなのですがいかんせん予算とスペースが… この点は今後の課題です。
発展性のあるローコスト 20cm バックロード
気軽に 20cm バックロードを導入できないか? 自分自身の課題を解決する意味もあり、ローコストに実現できる 20cm バックロードをテーマとしたプロジェクトを進めています。これについては 「FE206NV と FE208NS のバックロードホーンは共用できるか」のシリーズで詳しく解説していく予定です。
このプロジェクトでは 20cm フルレンジ用の新しいバックロードホーン型エンクロージャーを設計します。ポイントは「発展性」。一度苦労して制作したエンクロージャーをそのまま活用しながら、ユニット交換、さらにはエンクロージャーの改造によってグレードアップしていくことをあらかじめ想定したモデルとなる予定です。シンプルな FE206NV のバックロードが 重量級の FE208NS のバックロードに進化する(といってもそれほど大層なものではありません)過程をお楽しみいただけるようになる予定です。
左 FE206NV のバックロード。サブロク(t:21)2.5枚で2台できる。/右はそれにサブロク1枚強を追加した強化版
FE108NS 用 “Tundra Swan”と “Snow Goose”
今年発売された新型 10cm バックロード用フルレンジ、FE108NS に関しては以下のレポートを上げています。
この他 Fostex の純正バックロードホーン BK108NS も試聴し、いよいよこのユニットの活用方法も見えてきたところで “Tundra Swan” というスーパースワンのマイナーチェンジモデルの制作に着手しました。スーパースワンはどうしても「限定 10cmフルレンジ向け」といった印象があり、レギュラーユニットの FE108EΣ とか FE108NS とのマッチングはベストとは言えません。かといって、限定ユニットが発売されるのを待ち続けるというのもナンセンス。いっそのことレギュラー商品向けに特化したスワンを作ってしまおうというのがコンセプトです。それならば D-101 系の過去のバリエーション(スワン、スワンMkII、スワンa など)が存在するわけですが、そうは言っても最終形態は 「D-101S / スーパースワン」。一度このモデルを通過した上でのマイナーチェンジはまた別の意味を持つと言えます。設計者が異なるという極めて大きな問題には目をつぶってください。
この FE108NS 向けの Cubic Head タイプのバックロードホーン型エンクロージャー “Tundra Swan” はスーパースワンよりも若干小型に仕上がっており、1台作るのにサブロク合板1枚でつくることができます。しかし音道はスーパースワンを踏襲しているためリア開口。後ろの壁から一定の距離をおいて設置することになり、実質的な設置面積は広くなります。そこで設置性を高めるために構造を見直した前面開口バージョン “Snow Goose” も設計しています。こちらはまだ制作していないのですが、いずれ制作して音も聴いてみたいと思います。設置面積はおよそ 30cm × 30cm で音道は約2.1m / fc:30Hz となっており、Tundra Swan の 2.5m / fc:25Hz とはまた違った音になりそうです。
Tundra Swan(左) と Snow Goose(右)。前者は奥行330mm。後者は300mmで全面開口。
以上のように抱えているテーマはバックロードホーンばかりなのですが、板材やネットワークに凝った 2way スピーカーのプロジェクト等も進行しています。全てのプロジェクトを公開できるわけではありませんが、できる限り皆様の参考となる情報を提供して行きたいと思います。