FE206NV と FE208NS のバックロードホーンは共用できるか ①

バックロードのユニット交換は可能?

バックロードホーンのエンクロージャーは特定のユニット専用が基本。たくさんのユニットが使えるのは逆に言えばそれはベストではないと言っているようなもの…

というのは理想論で、現実問題として何がベストかということは簡単にはわからない。

ある程度ユニットの仕様が近ければよっぽど設計値がズレていない限り完成後の調整である程度の質に近づけることは可能だ。また、ユニットの個性(正確には個性だけではなくエンクロージャーとの相性も含まれる)として許容の範囲であることも多い。

バックロードは作るのが大変

ブックシェルフ型のスピーカーやフロアあるいはトールボーイタイプでもバスレフ型のスピーカーと比べればバックロードホーンは構造が複雑で製作する労力が半端ではない。(もちろん中身や外観の凝り方によってはバスレフ型でも複雑で大変ですが)

20cm バックロードホーンともなればエンクロージャーだけでも質量は数十キロにも及び、ユニットごとに「作り直す」というのは普通の人にとっては現実的ではない。

そこで今回は 20cmフルレンジのバックロードホーン専用スピーカーユニット FE206NVFE208NS で共用できるエンクロージャーを考えてみることにした。できるだけ安価に、一度苦労して作った箱に手を加えながらできるだけ長く使うことを想定している。

グレードアップを想定した箱を考える

まずはコストセーブということで FE206NV を使用して完成させる。後にグレードアップができるようにあらかじめ FE208NS でも使えるように考えつつ、エンクロージャー側も少し手を加えてさらにグレードアップできるようにしておく。

後から手を加えられる部分は…

  • 側板(もう1枚重ねるなど)
  • 空気室内の内容積変更
  • 空気室内および開口部(手が届く範囲)の調整

などであろうか。

側板

側板は減らすことは難しいが後からもう一枚重ねることは可能だ。
分厚ければ良いというわけではないので重ねることがイコール「グレードアップ」ということではないが、最初のエンクロージャーのウィークポイントが側板の響き過ぎにあるようならば効果が期待できる。

空気室容積

空気室は大きめに作っておけば減らすことは可能だ。
後から拡大するにはユニット取付穴の部分を拡げてサブバッフルを追加するなどの加工が必要になる。
初めからサブバッフルありきの設計にしておくことも一つの方法だ。「もう変えない」という段階になったら接着してしまえば良い。
今回のケースでは特に空気室で調整を図ることはなさそうだ。

空気室及び開口部等の調整

吸音材などの処理は必要に応じて行う。ユニットとエンクロージャーの相性によっては全く必要ないこともある。(もちろんお好みによる)重心を下げるために重量物を底面付近に置いたりすることも想定しておくと良いかもしれない。

吸音材は適材適所で使用すれば音質を調整することができる。同一口径、同一シリーズという程度の差であればチューニングできてしまうことが多い。もちろんシリーズ内であっても相違点が多いような場合には難しくなる。あまりにも大量な処理が必要な場合は設計そのものがどうかとも言えるのだが。また、吸音材ありきでの設計ということもある。

以上のような前提で 20cm フルレンジ用のバックロードホーンを考えてみる。

FE206NV で十分なパフォーマンスを発揮し、FE208NS にユニットをグレードアップしてもそのまま使用でき、エンクロージャーをアップグレードするとなお良いという仕様を目指す。

なお、FE206NV に付属の Application Sheet に掲載されているバックロードはかなり優秀だ。顔(正面から見たときのデザイン)がかなり寂しいのだが、かなりのパフォーマンスを見せる。作り方も簡単なのでそちらを選択するのも決して悪くない。


というわけで今回は作るのが大変な大型のバックロードホーンをできるだけ安価に製作し、気に入ったらさらに手を加えてグレードアップ、ユニットもグレードアップ、ということがは可能なのか? を考えるシリーズの第1弾とした。
次回以降はメーカーの Application Sheet のバックロードの分析、新しいバックロードホーンの設計について書く予定である。

>>【FE206NV と FE208NS のバックロードホーンは共用できるか ②】に続く