なぜかいま、ハシビロコウ

 先月はなぜかハシビロコウ製作のご依頼が2件続いた。今月中に一件、おそらく来月にはもう一件の納品がある。 スーパースワン系統のコンセプトを持った 20cm バックロードのスタンダードとして、この「ハシビロコウ」は定番化しつつあるようだ。なぜハシビロコウなのか?

ハシビロコウのネック部分

 理由の一つはもちろん、いわゆる「鳥型」であることだろう。長岡鉄男氏設計の「スワン」に端を発する鳥型のバックロードホーンはフルレンジの特徴の一つである「点音源」の良さを活かしながら、バックロードホーンによってそれに合わせた低音を付加しようという目的から生まれた形状だ。「バックロードホーンの理想の一つ」という論調で様々な解説がなされているので、この形状自体に一定の人気がある。

 長岡氏設計のモデルとして、10cm用には定番の D-101S(スーパースワン)。16cm用には D-168(スーパーレア)。20cm用には D-150(モア)がある。ところが、スーパースワンとスーパーレアは高さがそれぞれ 1,010mm、1,130mm であるのに対し、20cm用のモアは約1,850mm もある。そもそもの設計目的は広い会場でのデモンストレーション用とされていて「家庭用には向かない」と長岡氏本人も書いている。

WHD
D-150 モア6421850600
ハシビロコウ5821158563

 そこに一つの定番として登場したのが炭山アキラ氏設計の「ハシビロコウ」だ。高さは 1,158mm なのでユニット位置は 16cm のモアとほぼ同じ。このサイズであれば家庭用の範囲と言える。ホーン開口が前にあるというところも大きい。設置面積が 642×600 もあるスピーカー(モア)を背後の壁からの距離を十分とって設置するのは一般家庭ではかなり難しい。ハシビロコウは前面開口なので、余裕がなければ背後の壁との距離がゼロでもそこまで極端な問題にはならない。サイズとその構造から、使いやすさはハシビロコウが圧倒的だ。

ハシビロコウのボディ部分(前面)

 ユニットは FE208-Sol 用に設計されているハシビロコウだが、 FE208NS でも十分なパフォーマンスが得られる。設計者の炭山さんからすれば 「FE208NS ではちょっと」と思われるのかもしれないが、一般ユーザーが使うにはむしろ FE208NS の方が良いのでは? と思える部分もある。これは炭山さんのご自宅で FE208-Sol 仕様のオリジナル「ハシビロコウ」と、一般家庭において、一般の方が再生するソースを FE208NS 仕様の「ハシビロコウ」との両方を聴いた経験のある私の印象だ。

 前面開口の鳥型バックロードとしては弊社で設計したモデルもある。こちらはネック部を垂直方向ではなく水平方向に使っているのが特徴で、こうすることでホーンの長さを稼ぐことができる。つまり、モアと同等(約-5cm)程度のホーン長を保ちつつ、高さは家庭用で使う範囲に収めることができるわけだ。(W600 × H1155 × D600) こちらもなかなかのパフォーマンスを見せてくれた。興味のあるかたは以下の納品時のレビューをどうぞ。

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