【板材カット】ご依頼時のポイント

エクスペリエンス・スピーカー・ファクトリーではスピーカーシステムの設計/制作だけではなく、ご自身で制作される方のサポートも行なっています。板材カットのみ/塗装のみなどのご依頼も承りますので、お気軽にご相談ください。

今回は巣篭もり消費?のためか最近増え始めている「板材カット」をご依頼されるときのポイントをいくつかまとめましたので参考にしてください。


  1. 板の選択は慎重に
  2. 板のサイズ
  3. パネルソーの刃の厚みを考慮しよう
  4. パネルソーは止められない
  5. 板厚の誤差とその対処法
  6. 木目の方向
  7. 木材の外観(表面の状態や色味)
  8. 合板断面の穴

1. 板の選択は慎重に

マーケットに流通している板材であればどのようなものであってもお選び頂けます。もちろん板の種類によって音質は異なります。「この材料はこういう傾向」ということがあるのは事実ですが、それだけで全ての傾向が決まるわけではありません。厚み、構造、使用ユニット、内部の調整、ネットワーク、使用環境(お部屋や他のコンポーネント)等々の中の一つの要素に過ぎません。

板材以外の多くのことにも言えることですが、絶対的に「良い」と言えることはほとんどありません。それぞれのお好みに合わせて適材適所、何を狙うか、ということに尽きます。しかしながらそう簡単にいくものでもなく、一品ものの場合はたくさんの試作をするわけにもいきませんので「一発勝負」になります。まずはこれまでに使ったことがある板を選択するのが無難です。「分厚ければ良い」「重ければ良い」「鳴らなければ良い」というのも狙いによっては逆効果であることもあります。

2. 合板のサイズ

一般的なホームセンターでは合板のサイズは3×6(いわゆるサブロク)が最大です。これは3尺×6尺のサイズということで、ミリ換算するとおよそ 910×1820 <mm> です。合板のコーナーの 90° を正確に出すために端の部分を僅かに削ぎ落とすことがありますので、その板からどのように部材を切り出すかを示した「カット図/板取図」はあまりギリギリに設定せず、ゆとりを持って考えておく必要があります。
なお弊社では 4×8(シハチ / 約1210×2420)の合板も取り扱っています。場合によってはサブロク合板を使うよりも効率よく部材を切り出すことができます。

3. パネルソーの刃の厚みを考慮しよう

直線カットにはパネルソーという工作機械を用います。パネルソーの刃の厚みは多くの場合約3mmです。

例えば 910mm 幅の板から4枚の板を切り出そうとした場合、910 ÷ 4 = 227.5 で 227.5mm が最大ではありません。前述の削ぎ落としも考慮すると、(910-5)÷4-3 = 223.25 ≒ 223 が最大と考えておいた方が良いです。  (削ぎ落とし 5mm はかなり多めの見積もりです)

私の場合は余裕を持って刃の厚みを 5mm で計算し、削ぎ落とし分もそこで吸収させます。したがって 910mm 幅から4枚切り出す場合は幅 222mm を最大としています。 

910 ÷ 4 のサイズでは切れません
刃の厚みは 5mm で計算すれば安全

4. パネルソーは止められない

パネルソーは切断面の直角を正確に出せますし、直線性も確かです。しかし板を固定してからスイッチを入れて切り始めると、縦方向に一気に切断しますから、途中で止める切り方はできません。部材が L 字型だったりするとパネルソーでは対応できませんので、カット料金が変わります。正方形/長方形の組み合わせで対応できる部分であれば、 L 字型の板材などは避けておくのが無難です。

途中で止められませんので、次のような切り方もできません。

5. 板厚の誤差とその対処法

板の厚みは板材の種類によって様々ですが合板の場合は概ね 3mm ピッチです。MDF はもう少し細かく刻まれています。

注意すべきは板厚のバラつきです。例えば、厚み(t):15mm の合板を前後のバッフルに使用、200mm 幅にカットした天板と底板、それを側板で挟んだ構造とする場合(下図 ‘板厚による背面の段差’ )、板厚が寸分違わず 15mm であった場合は側板の幅(奥行方向)は 230mm で良いはずです。

ところが板厚に誤差があって t:15.5mmだった場合、奥行は231mm となり、側板は 1mm 足りなくなってしまい格好悪いです。

どちらかと言えば側板側を突出させておいた方が見栄えは良いので、あらかじめ1〜3mm(板厚が影響する枚数を考慮して決定)側板を大きめにしておくなどの方法があります。

木材は自然のものですから、板厚にはどうしても誤差が生じます。ご購入の際はあらかじめご承知おきください。なお、組立まで含めてご依頼いただく場合は板厚分を調整した上で切り出し/組み上げを行いますのでこうした段差は生じません。なお、その分だけ外形寸法や内部寸法に僅かな誤差が出ることになります。 

板材カットのみのご依頼で、こうした誤差を考慮してカットしてもらいたい場合にはカット図にどの部分が板厚と連動して変化する寸法なのかを図示し、組立図と合わせてご依頼ください。(それでも僅かな誤差は避けられませんのであらかじめご承知おきください。可能ならばあらかじめ板厚が大きい場合に対応できるように、大きめのサイズにしておいて、背面に突出させる方法をおすすめします)

またメーカーが発表する作例も板厚に誤差がないことを前提に考えられていることがあります。背面が側板よりも突き出てしまうのを避けたいのであれば、側板の寸法は数ミリ大きめに変更することをお勧めします。とくにバックロードホーンなどの場合、設計によっては板厚の誤差が大きくなることがありますので注意が必要です。

6. 木目の方向

合板も無垢材も多くの場合、木目は長手の方向に流れています。「クリア塗装」や「着色+クリア塗装」など木目が見える仕上げとする場合は外観に大きく影響しますので、考慮しておく必要がああります。木目が消える塗装の場合は木目はそれほど考慮する必要はありません。(無垢材の場合には外観以外の理由で考慮が必要ですが、無垢材に木目が見えない塗装を施すことは少ないと思いますので…)また MDF はその点は考慮する必要はありません。一部の4×8 サイズの合板で木目方向が異なることがあります。4×8 サイズの合板を使用する場合はカット図/板取図を作成する前に使用する予定の板材の木目方向は確認しておくのが無難です。

7. 木材の外観(表面の状態や色味)

無垢材や突板が貼られていないタイプの合板の場合、表面に節やわずかな穴があることがあります。できる限り目立たない位置になるようにカット時の向きなどは工夫しますが、限界もあります。どうしても目立つ位置に節や穴が来てしまうこともありますのでその点はあらかじめご承知おきください。

また、無垢材や色味の濃い突板は使用する部位によって木目や色調が大きく異なることがあります。気にされる場合には事前に確認した上で材料を決定しますが、交換する場合には実費をいただくことになってしまいます。自然のものですので、樹種をご指定頂いた後の実際の木目や色味についてはある程度お任せいただくことになります。

8. 合板断面の穴

合板の断面には「穴」が開いていることがあります。「カットのみ」「組み立てまで」のサービスの場合はこの穴は開いたままとなります。製品の品質上、全く穴が開いていないものをお届けすることは困難ですので、あらかじめご承知おきください。

塗装まで承る場合はパテなどで塞いだ上で下地処理を行なってから塗装しています。

9. 角穴の入隅について

角穴を開けることがある場合、原則として入隅(角の部分)に R3 程度の丸みが残ります。この入隅の R を嫌う場合にはあらかじめお申し付けください。なお、組み立てまで行う場合には原則として R は残さずに図面通りの加工を行っています。



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