床下コンクリートバックロード その後の調整

*床下コンクリートバックロード 導入時の記事は以下

室内の環境変化への対応

床下コンクリートバックロードホーン(Fostex FE208NS 使用)のお宅は天井も高く部屋も広い。必要最低限の家具だけが置いてあるだけで残業時間は長かった。耳で聴いても1秒くらいの残響が感じ取れるくらいだから計測すればもっと長い。ソファは皮製。椅子の座面も無垢の木だ。

残響時間は長いが嫌な響きではない。そのままでもある程度聴けてしまうのは響きの美しさがあるからだろう。もちろん好みはあるだろうがオーナーさんは許容範囲たった。デッドな環境で精緻な音を聴くよりは、比較的ライブな環境で広大な音場感を楽しみたいということなので、意図的に吸音グッズを持ち込むよりは適度な響きを残しつつそれを拡散させるのが良さそうだ。

とは言え耳で1秒数えられてしまうのは響きすぎだ。このままだとソースによっては楽しいが、聴くに耐えない状態になるものもある。家具などをさらに追加する予定はないらしいので、まず残響を抑える目的で、5〜6メートルはあろうかという斜めに傾いた天井にカーテンが吊るすことにしたらしい。最高点から垂直に下りてくる側の壁面にも少し掛かっている状態だ。

カーテンの設置によって響きはかなり収まったようだ。ほぼ1ヶ月振りに訪問したが、会話の響きや足音が全く違う。かと言ってデッド過ぎることもない。一般的にはまだ若干長いかもしれないが、オーナーのお好みからすると、適正かあるいはもう少し長いくらいが丁度良さそうだ。

大人しくなりすぎた音を派手目に調整する

しかしオーナーは落胆している。聴かせて頂くと確かに前回訪問時と比較すると音の精気が失われてしまっている。

納品のときは基本的に私自身が持ち込んでユニットの取り付けなどを行う。お客様自身にこだわりがある場合以外はその時に私自身が諸々の条件やお客様のお好みに合わせて調整を行なう。今回は室内が極めてライブな状態のときに納品しているのでそれに合わせたチューニングがなされていた。

響きが減じられた今の状態にあわせて調整し直すため、スピーカーユニットを取り外した。この床下コンクリートホーンは吸音材はスピーカーユニットを取り付けたヘッド部分の空気室内にしか設置していない。巨大なコンクリートのホーンは初めてだったので、納品の際には大量の吸音材を持ち込んで臨んだのだが、意外にもコンクリートホーンから余計な音は漏れておらず過剰と思われる響きはほとんど部屋に起因するものだった。結果ホーン内の吸音は一切行う必要がなかったわけだ。

数ヶ月前に自分がどのような調整をしたのか正直忘れてしまっていたが、ユニットを取り外して見てみると、通常私が行う調整量よりも多めに入っていた。ユニット背面にポリエステル系の吸音材(密度0.0085g)を20mm厚程度、226 × 226mm の背面全て、それをさらに左右それぞれ 70〜80mm 程折り返している。

通常キューブ形状のヘッドの場合は背面全てを覆うことが多いが、この種の吸音材だと厚みは 10mm 程度に抑えることが多い。部屋の残響の多さを考慮してスピーカーからの音は大胆におとなしい方向に調整してあった。

調整は初めは大胆に行うのが良い。仮に最終的な着地点が現状からほんの僅かな地点にあるとしても、その方向に向けて極端に変化させる。変化の方向に間違いがないか確認した上で、その変化度の強弱は次の段階で調整する。今回は響きを「出す」方向なので、一気に吸音材を取ってしまう。これでうるさくなり過ぎれば少しずつ戻していけば良い。

結果、吸音材を完全に取り払った状態で全く問題ないことが分かった。失われていた精気が甦り、かつ室内の残響が程よく抑えられた状態はトータルでは以前の状態を上回っていると感じられる。

というのは私の印象で、問題はオーナーがどう感じるかだ。前日に残響を抑えるための施工をして精気を失った音に落胆されていたが、この変化には満足されたご様子だ。

ツィーターを T500A MkIII へ

さらにこの日訪問した本当の目的であるツィーター交換も行う。今回は Fostex T925A から T500A MkIII への交換だ。

ひとまず コンデンサは元々付いていた 0.33μF のまま。T925A と T500A MkIII はスペック上は T925A が 4dB 音圧が高いが実際に使う帯域では 2dB 程の違い。さらにそれぞれが持っている音の傾向を考えると、 T500A MkIII の方がかなり大人しく綺麗な音の方向性を持っている。同じ C で繋げばツィーターの存在感はかなり弱まることが予想される。ただ、その「存在感」は単純に高域にだけ耳を傾けた場合の話だ。ツィーターがもたらす効果全体に注意しながら聴くとまた違った印象になる。中低域から高域にかけての品位は向上し、音に潤いと精密さが感じられるようになってくる。そういう意味では T500A MkIII の存在感は凄まじい。

もちろん音の傾向として T925A のような雰囲気の傾向を好む向きもあるだろう。ただこれまでこの手のホーンツィーターの比較試聴を行ったお客様のほとんどは、好みの傾向にかかわらず T500A MkIII(MkII の時代も含む)のこの品位に参ってしまう。 

これについてもオーナーの満足度は高い。結果、前日のルームチューニングによってネガティブな方向に変化した音は、その日のスピーカーのチューニングとホーンツィーターの交換によって元の状態をしのぐ向上を果たすことになった。

部屋に合わせた調整の大切さ

今回あらためて感じたのは部屋の環境によってスピーカー側もそれに合わせた調整が必要だということだ。こちらで調整したものがお客様の環境で同じように鳴っているということはまずない。通常はお客様の使用環境で調整を直接行っているのでそのようなケースは少ないのだが、全てそのような対応ができるわけではない。設置後の鳴り方についてはリモートで対応するしかないこともある。これまでの例ではある程度状況をお知らせ頂ければリモートで良い結果が得られることも多いので、気になる方は是非お問い合わせいただきたい。

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