Fostex Premium Craft W160A-HR & T250A を検証する ②

前回のプロローグからいよいよ試聴による検証に入っていく。全3回のレポートの第2回である。今回はバイワイヤリングやバイアンプによる違いを試聴してみる。また、チャンネルデバイダーを使用してパッシブネットワークとの違いも試聴してみた。

C-3800 + A-36 1台 シングルワイヤリング/バイワイヤリング

Accuphase のプリアンプとパワーアンプを用いてバイワイヤリングによる音の変化を確認してみる。まずはステレオパワーアンプ1台で青箱3を聴く。最初はシングルワイヤリングから。試聴する青箱3はネットワークが別筐体になっているのでパワーアンプからネットワークボックスまでをスピーカーケーブル1本で接続。

青箱1〜3 の使用は次の通り(再掲)

青箱1:内容積15ℓのバスレフ型。フロント/リア両方にダクトが付いており、どちらかを塞げば通常のバスレフ 、両方を塞げば密閉型として試聴できる。バッフル面積の関係でフロント側のダクトは2本に分かれている。

青箱2:内容積20ℓのバスレフ型。前後にダクト着脱用の「窓」が付いており、その「窓」にフタをするかダクトを取り付けるかでフロントダクト/リアダクトを変えられる。

青箱3:内容積20ℓのリアダクトバスレフ 。設計値は青箱2に近いが、フロントバッフルにダクトの開口スペースがない分だけ背が低くなって重量バランス改善。T250A + W160A-HR の開発目的に沿ったサウンドの決定版。ただしこれが万人の正解ではない。

Fostex Premium Craft W160A-HR & T250A を検証する(① プロローグ)

ひととおり試聴したあとはバイワイヤリング。パワーアンプからネットワークボックスのツィーター側とウーハー側をそれぞれ別のスピーカーケーブルで接続する。

若干の変化は感じられるものの大きな差は感じられない。分離の良さと実態感/空気感が出てきたような気がする程度か。ウーハーの量感が若干増加/中高域はやった方が良いが、やらなければダメとまではいかないレベルと言える。

C-3800 + A-36 × 2台

次はスピーカーはそのままに A-36 をもう一台追加してバイアンプにする。ステレオアンプなので、ツィーターとウーハーをそれぞれのチャンネルで別々に駆動する。

ワイヤリング方法の変更とはレベルの違う変化だ。低音がしっかりとして、男性の声が体に響いている感じが出てくる。あたかもサブウーハーを適切に追加したような変化だ。元ちとせさんの声にも実体感が出る。ここは追加する金額分の違いがよく出ていると言えるだろうか。

チャンネルデバイダーによる実験

次はチャンネルデバイダーとステレオパワーアンプ2台を用いてチャンネルデバイダーとパッシブネットワークとの違いを確認する。使用するチャンネルでバイダーは Accuphase DF-45。

C-3800+ DF-45 + A-36  2台

チャンネルデバイダー(DF-45)を接続してパッシブネットワークはバイパス。最初はウーハーのローパスフィルター、ツィーターのハイパスフィルターをいずれも 1400Hz, 12dB/oct に設定。その後、カットオフやフィルター特性を色々といじりながら試聴した。

1400Hz, 12db/oct の設定では当初パッシブネットワークと比較して中音域が強調されているように感じた。続けて色々な曲を試聴していくと、程よい調整状態だということが少しずつ分かってきた。パッシブネットワークと比較すると(今回の比較では)すごく整理された音調であるように感じる。

事前にメーカー側がいろいろな設定を試した結果、このセッティングがちょうど良かったとのことだ。曲によっては違うセッティングで楽しめる場合もあるとのことなので、さらに試聴する。

特定の曲をさまざまな設定で試聴

次に 一青窈「月天心」からTr.2「もらい泣き」を 12dB/oct の他 24dB/oct, 6dB/oct でも試聴してみる。

この曲ではスロープは 12dB/oct のままよりも 24dB/oct の方が合っており、逆に 6dB/oct だと色々と余計な音が聞こえてきてしまって楽しめないとのこと。実際に聴いてみると確かにそのように感じる。

全体的に響きが揃っていると楽しく聴くことができるのだそうだ。

余韻のコントロールがポイント

急峻なスロープでフィルターをかけるとユニット間の音色を合わせるのが難しくなる。リレー競争でいえば、バトンゾーンが極端に狭い感じだ。

この曲では 6dB/oct のような緩やかなフィルターでは音数や余韻は多くなるもののそれらが「過多」になる印象だった。逆に鋭いフィルターでは必要と感じる余韻までも無くなってしまう感じがした。96dB/oct などの急峻なフィルターも試しましたがその点は顕著で、24dB/oct や 12dB/oct あたりが聴きやすい印象であった。

どちらを良しとするかは普段聴く曲やお好みによる。近年はPCで制御する安価なデバイダーもある。当社のホームスタジオでも miniDSP で W160A-HR と T250A を聴ける状態となっており、スロープの違いによる簡易的な試聴は可能となっている。

今回は試聴のみだが、測定結果を見ながら細かい調整をしていくのも良いだろう。主観だけでなく客観的要素を取り入れるのも面白い。

次回は W160A-HR と T250A をバスレフで使う場合のリアダクトとフロントダクトでの違いや、それぞれをどのようにセッティングした時にどのようなパフォーマンスを見せるのかについてをレポートする。