Fostex Premium Craft W160A-HR & T250A を検証する ①(プロローグ)

プレミアムクラフトのユニットを知ってもらうために

Fostex の Premium Craft Series のウーハーとツィーター、W160A-HR と T250A。興味のある方も多いことと思うが、なかなか聴ける機会は少ない。開発中と開発直後は二子玉川の Fostex ショールームで試聴したり説明を受けることができたが、今はそのように気軽に立ち寄れる場所は無くなってしまった。(ご予約いただければ弊社ホームスタジオで試聴可能<2020年11月現在>)

このユニットの音を体験したい、良いものならば使ってみたいと興味を持つ方は多いと思う。しかしこれらのユニットは「ちょっと試してみる」には勇気のいる価格設定だ。
そこで、このユニットの使いこなし事例を実際に検証してご紹介することにした。今回は「いかにしてユニットを使いこなすか/ユニットの力を引き出すか」という視点よりも「いかにしてそれぞれのユーザーの好みに合わせるか」という視点を重視している。例えばこのシリーズ用のエンクロージャーは 20ℓ のリアバスレフが一応の推薦エンクロージャーである。しかしメーカーが考えたこの箱は必ずしもそれぞれのユーザーにとってのベストであるとは限らない。他にも 20ℓフロントバスレフ、15ℓフロントバスレフ(/リアバスレフ)、12ℓ密閉などが考えられ、それぞれが異なる嗜好を持つユーザーにとってのベストたり得るのだ。

今回はこうした箱の容量やリア/フロントダクトの違いを含め、この 2way 用ユニットを用いた様々な検証を行った際のレポートをお届けしたい。

→本ユニット開発の様子は Fostex 6.5″ 2way Project でご覧頂けます

多様な楽しみ方に対応

16cmウーハー W160A-HR と 25mmツィーター T250A はフォステクスの最上の技術を投入して作られた Premium Craft Series のスピーカーユニットだ。これらのユニットは「演奏している様子を思い浮かべられるような情景をリアルに再現する」というゴールを設定して開発がスタート。組み合わせるエンクロージャーも同様の目標のもとに検討が進められた。

ところが、開発の過程で試したエンクロージャーの中には、目指しているゴールとは完全には合致しないものの、試作機として切り捨ててしまうにはもったいないほど魅力あるサウンドを奏でていたものもあった。目標とするサウンドとは対照的な「リスナーに向かって音が飛び出してくるような音」でさえも、エンクロージャーやセッティングを工夫することによってこのユニットを用いて表現できることがわかった。

それは一応の最終版として設定した 20ℓ のリアダクトバスレフでは表現することのできないサウンドだ。もし試聴会等でこの最終版の音だけを聴いた人のお好みが「音が前に飛び出してくるような音(あるいはそのような音楽)」であったとしたら「このユニットは好みには合わない」という判断をすることになる。しかしその判断は早計というものだ。異なる状態で使えば、同じユニットでお好みに近い音を再生することは十分に可能なのである。

3つのエンクロージャー

まずは、エンクロージャーの違いから。公開プロジェクトの段階ではエンクロージャーのバージョンは2代目まで。その後3代目も完成したということなので、それらを含めて試聴を行う。
ダークブルーに塗装されたこれらの試作箱はその外観から通称「青箱」と呼ばれている。ここでも初号機から順番に「青箱1」「青箱2」「青箱3」と呼ぶ。それぞれの概要は次のとおり。

  • 青箱1:内容積15ℓのバスレフ型。フロント/リア両方にダクトが付いており、どちらかを塞げば通常のバスレフ 、両方を塞げば密閉型として試聴できる。バッフル面積の関係でフロント側のダクトは2本に分かれている。
  • 青箱2:内容積20ℓのバスレフ型。前後にダクト着脱用の「窓」が付いており、その「窓」にフタをするかダクトを取り付けるかでフロントダクト/リアダクトを変えられる。
  • 青箱3:内容積20ℓのリアダクトバスレフ 。設計値は青箱2に近いが、フロントバッフルにダクトの開口スペースがない分だけ背が低くなって重量バランス改善。T250A + W160A-HR の開発目的に沿ったサウンドの決定版。ただしこれが万人の正解ではない。
青箱1青箱2青箱3
内容積15ℓ20ℓ20ℓ
ダクト前後フロント/リアフロント/リアリア
青箱2 こちらはホームスタジオで試聴可能(2020年11月現在)
主な試聴曲

今回の試聴には主に以下の曲を用いた。

  • 「コンサート後のコンサート」から tr.6 ワルツ - スケルツォ 作品34 / Gidon Kremer (Violin), Elena Kremer (Piano)
  • ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番, 第5番 / Yevgeny Sudbin, Minnesota Orchestra, Osmo Vanska
  • Stranger In Us All / Ritchie Blackmore’s Rainbow,
  • Starkers in Tokyo / Whitesnake
  • 「ハイヌミカゼ」から tr.4 ひかる・かいがら / 元ちとせ

以上のとおり今回はまずプロローグのみをお届けした。次回以降は…

 ② バイワイヤリングとバイアンプ, チャンネルデバイダー
 ③ フロントダクトとリアダクト/セッティング角度

に関する試聴結果をレポートする予定だ。