Fostex FEシリーズ / En から NV へ

 Fostex のフルレンジ ‘FEシリーズ’ の起源は60年近く前にまで遡る。これまでに幾度かのモデルチェンジがあり、近年では2019年に最新の FE-NV へと生まれ変わった。モデルチェンジからだいぶ時間が経ってはいるが、あらためてそれぞれの口径についての所見を述べてみたい。

FE83NV / FE103NV

 FE-En から FE-NV へのモデルチェンジはまず小さい方の2モデル、FE83NVFE103NV からスタートした。いずれもモデルチェンジの内容は似ている。キモとなるのはハトメレスだろうか。NV へのモデルチェンジで振動板は軽くなっている。この軽い振動板とハトメの相性が悪いらしく、中音域で大きな歪みを発生してしまうらしい。ハトメをなくすことにより振動板の変位が均一になり、振動板の全面が一様に振幅するようになった。

(左)FE103En/(右)FE103NV

 振動板の材料の配合も変わり非木材パルプの他化学繊維やマイカといった鉱石も使用されている。写真の左側が FE103En, 右側が FE103NV。かなりそっくりだが、ハトメの有無と振動板表面のキラキラが違う。

En と NV の比較

 同じバスレフ型のエンクロージャー(BK85WB2BK105WB2)で比較試聴すると、中域/低域のバランスが変わったように感じる。FE シリーズの特長として「高域にかけての突き抜けるような勢い」があげられる。この特長はともすれば耳障り、中高域が目立つことによる低音感の不足が短所にもなり得た。こうした部分は手慣れたユーザーであれば使いこなすこともできるがコツがわからないと難しいところでもある。
 ところが NV はある程度「適当」な箱に入れても耳障りになるような中高音は出にくい。低音量にそれほど違いがなくても、耳障りな中高音が聴こえにくくなることによって低音不足は感じにくくなる。シリーズを通して総合的にバランスが中域〜低域寄りに若干シフトしたようなイメージだ。それでも元来の FE シリーズの特長は維持しており、一方で使いやすくなったという印象だ。
 特に FE83NV と BK85WB2 との相性は良く、そのまま標準のエンクロージャーと考えても良い。

 周波数特性を見て気になるのは中域のディップだ。これは FE だけでなく FF シリーズなどにも見られる。エッジの逆共振によるもので軽量のエッジの場合によく見られる。
 ここはエンクロージャーによるロードで変化する。一般に、エンクロージャーは低域特性ばかりに影響するものと思われがちだ。ウーハーの場合はそのような傾向が強くなるが、軽量の振動系を備えたフルレンジの場合は特に強く影響を受ける。FE シリーズでも中高域の特性はエンクロージャーに収めた場合とは異なることがあるので参考にする場合はピーク/ディップを気にするのはほどほどに、過度に気にする必要はない。FE-NV シリーズの公式特性は無限大バッフルによるものなので、背圧は全くかかっていない状態だ。エンクロージャー容積が有限になり、小さくなるにつれて背圧は大きくなってくる。エッジの逆共振にだけ注目した場合、小さければ小さいほど影響が少なくなるというわけでもなさそうで、「適度な背圧」がポイントとなりそうだ。他の要素もあることなのでそこは難しいところだ。

*FE-En シリーズの公式特性は600L密閉箱に入れた状態

FE126NV

 FE126NV は今回の一連のモデルチェンジでは唯一磁気回路が見直された。マグネットがひとまわり小さくなり、低域と高域のバランスが改善された。これによってバスレフでもオーバーダンピングユニットならではの引き締まった力強い低音を味わうことが容易になった。バスレフでも十分なズッシリ感を得られる。10cm だと物足りないが 16cm だと大きすぎるという方向けには重宝するサイズだ。

 12cm 口径のフルレンジは定番サイズとも言える 10cm とは一味違う低域の余裕を感じさせてくれる。10cm のバスレフで豊かな低音を追求しようとするとエンクロージャーをある程度大きくする必要がある。10cm 口径の FE103NV を 9ℓ 程度のエンクロージャーに入れると、かなりの低音感が得られるが、9ℓ となるとすでに 12cm 口径を取り付けることが可能な容量になってくる。10cm 口径で「頑張って出す低音」と12cm で「余裕を持って出す低音」には質感に違いが出てくる。中高音とのバランスもあるしお好みにもよるので、絶対的に 12cm が優れているということではないが。また、12cm 口径であればまだ高域の質を心配し過ぎるほどの大きさではなく「フルレンジ」としては非常にバランスの取れたサイズだ。
 FE126NV はバックロードホーン用ユニットでもある。磁気回路が見直されても依然として強力な駆動力を持っており、大きなホーンを力強く駆動できる。様々なエンクロージャーを力強くドライブし、質の高い中高域を奏でる力を備えた本機のフルレンジとしての実力の高さは特筆すべきものがあと言える。

FE166NV

 FE166NV は 12cm のモデルよりもさらに腰がズシっと座る感じになる。男性の声が体に響く感じまで聴けるようになってくる。今までの FE では破綻してしまいそうな少し刺激的な弦の音なども破綻させることなくしっかり聴くことができる。
 この口径からは FF シリーズと同程度のサイズのバスレフ型エンクロージャー(BK165WB2 など)では低域と中高域のバランスが厳しくなってくる。バックロードでの使用を検討したくなってくるだろうか。バスレフで使うにしても Application Sheet  に掲載された図面にはもう少し工夫を凝らしても良さそうだ。
 なお全ての FE シリーズを BK-WB2 シリーズのエンクロージャーに入れて行った試聴会ではこの FE166NV + BK165WB2 が最も参加者の評価は高かった。次点で FE126NV + BK125WB2 だろうか。

FE206NV

 FE206NV はさすがの低音。ピアノのボディ全体が響いているような雰囲気まで感じることができる。FF シリーズ向けのバスレフ型エンクロージャー BK225WB2 だと帯域バランスは完全に高域寄りとなる。FE206NV は是非バックロードで聴きたいところ。
 FE206NV を Application Sheet のバックロードで試聴すると、バスレフ(BK225WB2)の時とはエネルギーバランスが変わってだいぶ聴きやすくなる。木管楽器の鳴りが、何とも言えない上質さ。スケールはさすがに別格だ。

弊社で設計/制作した FE206NV のバックロードホーン。最小限の設計でも 20cm ならではの迫力を味わうことができた。

FE の魅力とは…

 FEシリーズは昔ながらの雰囲気を残しつつ、度々のモデルチェンジによって現代的なサウンドのテイストも持ったシリーズだ。パラメーターは現代的な視点からだと疑問に感じるような値になっていたり、スタンダードな測定方法では音圧周波数特性も良いとは言い難い。使い方によってはひどい音になることもある。最新の NV ではそのような面は緩和されているように感じるが、それでも FE シリーズを使い慣れている人でなければ少し使いにくいかもしれない。
 しかし上手く使いこなすことができれば、他では得られない独特のサウンドを奏でてくれる。これでこのユニットの魅力に取り憑かれてしまう人もいる。
 通常の2way → FE の順で聴くと高域の独特な音がクセに感じられ、ネガティブな印象となることが多い。(もちろん曲にもよる)そんな時は、十分な時間を空けた後に、逆に FE → 2way の順で聴いてみてほしい。今度は 2way の音に物足りなさを感じることがあるかもしれない。そこが FE の魅力と言える。

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