サブウーハー追加のポイント

サブウーハーを追加する上でのポイントは?

 サブウーハーをメインスピーカーに加える目的は様々だ。低音の量が不足していると感じるから加える。低音の質を改善したいから加える。様々な理由が考えられる。人それぞれに多様な事情がある上に、具体的に何が不満なのかを正しく理解することは難しいため、漠然と「低音が… サブウーハーでも…」となる。

 サブウーハーの使用にあたっては、1本使いか2本使いか。カットオフ周波数をどうするか。ボリュームをどうするか。設置位置をどうするか。など使いこなす上でのいくつかのポイントがある。これも「どれが良い」というような決まったセオリーがあるわけではなく「ケースバイケース」としか言いようがないため「サブウーハーの使い方!」のような記事を書くのはかなり難しい。

 今回は上記のようないくつかのポイントについて、どのような考え方があるのか、またかつて実験した時にどうだったのかという体験を踏まえて一つ一つ解説していく。汎用性のない部分もあるので、個別具体的な例について疑問のある場合には個別にお問い合わせ頂きたい。

1本か、2本か

 ステレオ再生の場合、通常は L と R で2本のスピーカーを使う。スーパーツィーターであれば「片チャンネルだけ追加する」という例はほとんどないのだが、サブウーハーの場合は「1本だけ追加する」という選択肢が一応はある。

 かつては「3Dウーハー」と呼ばれる左右の低音信号をミックスしてセンターから再生する方式がよく紹介されていた。自作用に専用のネットワークも売られていたほどだ。(筆者も所有している!)「低音は指向性が弱いのでどこに置いても良い」と言われ、この方式はよく使われていた。

 現実には3Dウーハーにはそれなりに指向性の有る音が含まれているし、人間は意外とどこから音が出ているのかということを感じる能力が高い。その辺の違和感が無くなるように調整すると、3Dウーハーの音圧はかなり控えめにせざるを得ない。また、低音が一方のチャンネルに寄っているような音源の場合は極めて不自然になる。有名どころだと、 “Waltz for Debby” (Bill Evans Trio) などはベーシストが左にいるので、違和感が強くなる。オーケストラも低音楽器が右に寄っていたりはするが、一時期のモダンジャズのように極端に寄っていることはほとんど無いので、そこまで違和感はないかもしれない。

 サラウンドフォーマットにおける 0.1ch の存在も1本だけ使うことを後押しする。多チャンネルフォーマットだと 0.2ch の場合もあるが、主流は 0.1ch である。ステレオ再生時におけるサブウーハーの追加とは性質が異なるものであり、もともと1本で再生することを前提にしているチャンネルなので、今回の話題とは直接的な関係はないが、「1本でも良い」気にさせる要因にはなっていると思われる。

 1本使いは完全に否定されるべきものでは当然なく、調整や求める状態によっては全く問題がないこともある。しかし、追求する内容によっては2本でなければ達成できないこともあるのは事実であろう。

 また、同じ音圧を得ようとしたときに、2本であれば単純に言えばウーハーの振幅は半分になる。スピーカーユニットは振幅が少ない方が正確に動作できるものであり、その点でも有利になる。

 2本ものサブウーハーを設置するのはスペースのことを考えると難しいことも多いが、一度体験すると1本だけでは表現できない世界を感じてしまうのも事実なので、求める内容によっては「2本使い」一択となってしまう。

カットオフ周波数をどうするか

 自作スピーカーをやられている方の場合は特に、聴感よりもロジカルなアプローチでサブウーハーを考えることが多い。メインのスピーカーの音圧周波数特性を気にしながら、サブウーハーのカットオフ周波数を考え、フラットにしようと試みる。しかし、サブウーハーをフラットに繋ごうというアプローチは基本的には難しいと考えた方が良い。

 そもそもメイン側のスピーカーは基本的には単体で満足のいく低音を再生することを前提に作られている。ユーザーがそれに満足しているか否かにかかわらず、健気にも「低音を出そう」としているわけだ。そこにサブウーハーをフラットに繋ぐということは低音域において両方のスピーカーがどちらも再生してしまう帯域が広くなることになる。通常複数のスピーカーユニットをクロスさせて使う場合は両方にフィルターを入れる。サブウーハー(アクティブサブウーハー)側にはローパスフィルター(ロー<低音>をパス<通過>させる、すなわち高音はカットするフィルター)が入っているから良いとして、メインのスピーカーにはサブウーハーとクロスさせるためのハイパス(ローカット)フィルターは入っていない。低音は「出したい」音とされているからだ。(当然だ)

 これをフラットに繋げようとしてカットオフ周波数を決めてしまったり、音圧をメインスピーカーに合わせてしまったりすると質の高い低音を再生することは難しい。フラットに繋ぐのではなく「メインだけでは再生できていない帯域の音を少しでも出してあげよう」くらいの感覚でいる方が良い。

 重要な観点は二つ。低音の「量を求める」のか「質を求める」のかという点だ。量を求めるのであればある程度の周波数までカットオフ周波数を上げなければそれを実感できないし、一定レベルまでボリュームを上げなくてはならない。それで目的が達成できるのであればそれで全く問題はない。しかし「質」を追求する場合は、カットオフ周波数もボリュームも慎重に検討しなければならなくなる。そして多くの場合、どちらもかなり控えめな設定になるのだ。

 カットオフ周波数を調整するとき、最初はそのモデルで設定できる最も下の周波数にセットする。そしてボリュームを最小レベルから少しずつ上げていき、低音の鳴り方の変化を聴く。(なお、位相を調整できる場合には最初はボリュームを上げて、どのポジションに設定すると低音を大きな音で感じるかを先に決める。0°か180°かを選べる場合で、どちらに設定しても同じ場合にはどちらでも良い。あるいはサブウーハーの設置場所を変えるのが良い場合もある。)

 かなりボリュームを上げても思ったような低音の質感にならない場合、カットオフ周波数をほんの少しだけ上げてみる。そしてまたボリュームを調整する。これの繰り返しだ。ボリュームを先に決めてからカットオフ周波数を調整するのはかなり難しいと思う。

 なお、サブウーハーのツマミを調整した後、試聴するときはリスニングポジションに移動する。ツマミに手が届くような位置とリスニングポジションでは低音の聴こえ方はだいぶ違うはずだ。この行ったり来たりを一人でやるのはかなり大変なので、可能ならばツマミの操作は誰かに手伝ってもらった方が良い。

ボリューム

 ボリュームについては前述の通りである。先にカットオフ周波数を決めておくと良い。なお、サブウーハーがどこにあるのかが分かってしまうような時はボリュームが大きすぎるか、カットオフ周波数が高すぎる。もう一度始めから調整した方が良い。もちろんどこにあるのかが分かってしまっても良いからとにかく「低音の量が欲しい」という場合にはその限りでない。

設置位置

 例えば2台使いの場合は左右のメインスピーカーのそばに置くのが一般的だ。内側が良いか、外側が良いかということは設置における現実的な場所の問題もある上、部屋の状況によっても異なるため一概には言えない。

 「サブウーハーをここに置きたい」と、メインスピーカーをベストな位置から移動するなどということは本末転倒なのでやめた方が良い。こればかりは本当にケースバイケースなので、現実的に設置できる範囲で適切な位置を探すしかない。

 なお、サブウーハーは床に設置することが多いが、底面の前側にインシュレーターや木片などを挟んで上向きにすると、低音がスッキリとすることがある。これは効果があることが多いので必要に応じて試してみると良い。

 1台使いの場合はセンターに設置して LR の信号を混ぜたくなってしまうのが人情だが、これまで色々と試した範囲では、LR の信号は混ぜてしまうよりもどちらか一方の信号だけにしておいた方が良い結果が得られたことが多かった。その場合はセンターではなく入力した信号の側のメインスピーカーに寄せる。サブウーハーからの音圧を上げすぎたり、カットオフ周波数を上げすぎたりしてしまうと音像全体がサブウーハー側に寄ってしまうので、2本使いの時よりもさらに「ほどほどに」しなければならない。ただそれでも十分サブウーハーが追加されたことによる効果を味わうことは可能だ。

 なお、メインスピーカーとの相対的な位置関係はもちろん、部屋の中でサブウーハーがどの位置にあるのかということも重要だ。しかしあまりなんでも気にしすぎると「置かなくて良い」となってしまうので、トータルで優先順位を決定していくしかない。

選択するサブウーハーのサイズ

 サイズは組み合わせるメインスピーカーによって決めるのが基本だ。単純に音圧の問題があり、サブウーハー側のボリュームを MAX にしても効果が得られないようならその組み合わせは NG となる。

 ならば大は小を兼ねるのかといえば必ずしもそうとは言い切れない。例えば、小口径フルレンジに 25cm ウーハー搭載のサブウーハーを組み合わせた場合、小型フルレンジの中高音の質感と、25cmウーハーから漏れ出てしまう中音の質感が全く合わずに違和感をおぼえることがある。それを防ごうとカットオフ周波数を下げていくと、今度は低音のボリュームの割りに中低音の音圧が低くなり、これはこれでまた不自然だ。調整次第では全体の質感を向上させることはできるが、贅沢過ぎる使い方と言える。

 このようなケースでは逆に小型のサブウーハーの方が適していたりする。サブウーハーを「片チャンネル2台使い」の実験もしたことがあるが、これもなかなか良い。実際にやる人がいるか分からないが、Fostex の 8cm フルレンジ FF85WK に PM-SUBmini2, PM-SUB8 を組み合わせたときは、フルレンジの中高域の良さを残しながら、低域も極めてワイドレンジというシステムが出来上がった。

このように、音圧のバランスだけではなく、それぞれに搭載されているユニットの口径差があまりにも大きいような場合には注意した方が良い。音圧だけではなく、音質にも気を使いながら選択する必要がある。

こちらは FE83En の密閉と PM-SUBmini2 の組み合わせ

 メインスピーカーがバックロードホーンの場合はまた勝手が違う。小口径フルレンジ(例えば10cm)でも低域の音圧が極めて高く、25cm 口径のサブウーハーを組みわせても問題ない(というよりも20cmでは足りない)ことがある。これは求める低音の質にも関連することなので一概には言えないがそのようなこともあれば、20cmフルレンジのバックロードに 20cm口径のサブウーハーでも効果が得られることはある。バックロードで最低域を再生することはかなり難しいが密閉型のサブウーハーであれば、音圧は低くても再生自体は可能だからだ。密閉型のサブウーハー、例えば CW250D などであれば、バックロードホーンのスピード感に遜色ない低音の補強が可能である。

 以上がざっと考えた範囲でのサブウーハーを加える場合のポイントだ。

 いずれにしてもどのような点に不満があり、それをどう変えたいのか ということを知ることが大切。それを踏まえた上で「どうするのか」を考えるのが良い。