「かんすぴ」全モデル試聴

ハイCP(?)モデルが勢揃いのFOSTEX「かんすぴ」シリーズ

FOSTEX の「かんすぴ」シリーズは完成品のエンクロージャー(スピーカーボックス)にスピーカーユニットを取り付けるだけで簡単に完成させることができる自作スピーカーの入門モデルです。入門モデルではありますがその音質はなかなかのもの。「かんすぴ」がスピーカーやオーディオの楽しさを知るきっかけになったなんていう方もいるとか…

そこで、今日はその「かんすぴ」の実力を再確認すべく、全モデルを試聴してみました。

PC200USB-HR で「かんすぴ」を鳴らす!

試聴には同じくFOSTEX の USB DAC と アンプ一体型の PC200USB-HR を使用しました。PC は MacBook Air。 Audirvana で再生します。USB接続で PC200USB-HR につなぐとそのまま PC200USB-HR からスピーカーケーブルで「かんすぴ」を鳴らせます。実にシンプル!

3つのジャンルで試聴

試聴には次の3曲を主に使用しました。宇多田ヒカルの「道」はハイレゾ(24bit/96kHz) です。PC200USB-HR は24bit/96kHz まで対応しているので問題ありません。

  • “Locomotion” / Blue Train, John Coltrane
  • “道” / Fantôme, 宇多田ヒカル
  • “Laudamus te” / Mass In C Minor K.427, W. A. Mozart (Sofia Symphony Orchestra)

P650-E + P650K 「かんすぴ」シリーズ最小モデル

P650-E + P650K

「かんすぴ」最小の組み合わせ。85W×170H×126Dmm。このサイズでもJAZZの雰囲気を感じさせてくれます。突っ込んだ聴き方をすればシンバルは金属っぽくないし他の楽器やボーカルもちょっと不自然。ただPCスピーカーや廉価のアクティブスピーカーと比較すれば、かなり”いい感じ”で楽しませてくれます。
セッティングはシビアでしっかりと耳の方向に向けたセッティングが必要。左右の角度だけではなく、上下方向も調整してやるとかなり音場感や全体の解像感が向上します。P800-E や P1000-E など他のモデルもここに関しては同じです。
ミサ曲を聴いても楽器の音やボーカルの不自然さは否めませんが、音場感は良く表現されています。帯域バランスもそれほど悪いとは感じませんが全体的なレンジ感を確保するために犠牲となっている部分が多く感じられてしまいます。
とはいうもののユニットとエンクロージャーのセットで片ch ¥3,000であることやこのサイズを考えると素晴らしいでしょう。
ただスペースとコスト的に許されるのならP800-E, P1000-E がベターでしょうか。


P800-E + P800K

JAZZ でのシンバルの金属音の不自然さは残りますが、P650-E と比較するとサックスなどの音の厚みはかなり出てきます。全体的な傾向は P650-E と同じです。


P1000-E + P1000K

このサイズ(121W×243H×179Dmm)になるとだいぶ音楽に厚みが出てきます。それでも金属音の不自然さは若干残りますがボーカルにはかなりリアリティが出てきます。 JAZZでもシンバルの音には相変わらず不満が残るものの、サックスの音はだいぶ良くなってきます。
「道」についてはかなり好印象。POPS系はかなり楽しめそうです。
このスピーカーも少し上向きにセッティングして試聴しました。特に机の奥の方にセッティングする場合で机の反射が多くなるときは特にオススメの方法です。手間をかけずに簡単に音質改善が図れます。


P1000-BH + P1000K

かんすぴシリーズ唯一のバックロードホーン型エンクロージャーです。とにかくJAZZドラムの実在感が凄い! シンバルの音はユニット依存で P1000-E のときと同じ印象ですが、ユニットに背圧がかかりにくいバックロードホーン型はとにかく元気が良く、JAZZの躍動感は素晴らしいものがあります。
「道」ではやや奔放に鳴りすぎるようで、スタジオ録音の曲がややライブ調の雰囲気になります。この辺りはユニット背面の中高音がホーンから漏れ出てくるバックロードならではのものとも言え、好みが分かれそうです。ただこればセッティングやチューニングで調整できる範囲のものです。この感じが強くなりすぎると全体的にボーボーいった感じになり、バックロードとしては失敗作ということになります。自作品ならいざ知らず、製品版のこのモデルではさすがにそういうことはありません。
P1000-BH くらいのサイズ(145W×343H×216Dmm)になると机の上ではかなり大きく感じられます。このくらいの鳴りっぷりだと、ある程度距離をとった上でしっかりセッティングしてやりたい気持ちになります。

*2020年9月15日、P1000-BH に特化した記事【Fostex P1000-BH を最大限活かすには】をアップしました。合わせてお読みください。


P802-S

8cmウーハー + ツイーターの2ウェイ。これまでのフルレンジのモデルとはだいぶ趣が異なる音調となります。シンバルの金属感はフルレンジのモデルよりも出てきます。かなり小さめの箱に入れていることもありやや腰が高い気もしますが全体としてはバランスのとれた聴きやすい音質です。


P2080E + PW80K + PT20K。 縦長のダブルバスレフ型。

P2080-E + PW80K + PT20K

P802-S に搭載されているのと同等のユニットが搭載された2ウェイのダブルバスレフモデルです。 P802-S の低域が拡張されたような感じで、腰高な感じが否めない P802-S のウィークポイントが改善されています。それでもまだもう少し低域のパンチは欲しい感じでしょうか。低域方向のレンジは8cmウーハーのモデルとしてはかなり伸びています。


P803-S。 グリルが付属します。

P803-S

P802-S と同等のユニットを使用した2ウェイ。P802-S よりもエンクロージャーのサイズが大きいバスレフ型。 P2080-E よりは小ぶり。P802-S がリアダクトであったのに対し、本モデルは底面にダクトが設けられ、インシュレーターによってエンクロージャーが浮かされている状態になっています。インシュレーターを介してベースボード一体化しており、設置面がオーディオ的に適していない(振動して鳴ってしまうような)場合でも比較的その悪影響を受けずに鳴らすことが可能です。P802-S よりもエンクロージャーのサイズが大きいバスレフ型。 P2080-E よりは小ぶり。比較して聴くと低域方向のレンジは P2080-E に及びませんが、量感不足と感じることはありません。高域は P2080-E や P802-S よりも落ち着いた感じで聴きやすく、万能型といったところでしょうか。同じユニットを使用しても P2080-E, P802-S の音はかなり違います。スピーカーにおけるエンクロージャーの役割の大切さを改めて感じさせてくれます。

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