Fostex P1000-BH を最大限活かすには

こんなに小さなバックロード使えるの?

P1000-BH は完成品のバックロードホーン型エンクロージャーとしてはかなり小型の部類に入る。小型ではあるが、使用するスピーカーユニットは10cm口径なので低音が極端に不足するわけでもなく、それなりにバックロードホーンの良さを味わうことができる貴重なボックスだ。
元々は音楽之友社の雑誌『ステレオ』の付録 P1000 というスピーカーユニット向けに発売されたモデルだが、その後 フォステクスから P1000 の類似モデル P1000K が発売されたため、引き続きそのユニットを標準と考えることができる。(P1000 は ONTOMO Shop で2020年9月14日現在購入可能です)

かんすぴシリーズの P1000K を使う

見た目はよく似ているがこれらのユニットはスペックがそこそこ違う。特に Q の違いは大きく、P1000 が Qo 0.8 であるのに対して P1000K は 0.53 。Fs も 90Hz → 82Hz となっている 。普通に使用した場合 P1000 の方が低音の量感を感じることはできるだろう。 P1000K の方は少し引き締まった低音になるが、音階表現はおそらくこちらが優勢だ。(もちろんエンクロージャーにかなりの部分は依存する)P1000-BH に入れてもそれぞれの傾向を感じることはできる。このあたりはお好みでもあるので優劣の問題ではない。

FE103NV は使えるのか?

P1000-BH には 同じくフォステクスの FE103 シリーズを入れて楽しんでいる方も多い。ところが公式サイトには対応ユニットにFE103NV は含まれていない。なぜなのか? FE103En の時は記載されていたのに…?
実は FE103NV や FE103En は P1000-BH に取り付けた際にバックプレートが底打ちすることがある。空気室の裏側に吸音材が貼り付けてあり、その吸音材を貼り付けている接着剤の若干の誤差によってユニットが持ち上げられ、フレームがバッフルからわずかに浮いてしまうことがある。こうした事情から FE103NV は公式には「非対応」という扱いとなったようだ。結果的に取付が保証されているのは P1000K のみである。
しかし、実際には取り付けられる場合がほとんどで、マーケットにもたくさんのレビューが存在する。セット売りされているケースすらあるらしい。浮いてしまった場合でも吸音材を貼り付けている接着剤をカッターなどで削り取り、吸音材を他の接着剤で貼り付けなおせば使用は可能になる。*


*その後、上記のような注意書きが追加され、条件付き「適合」となった模様です / FE103NV は FE103NV2 に読み替えていただいて問題ありません。

FE103NV を取り付けた場合、P1000K と比べるとバランスは中高域寄りとなる。相対的に低音の量は不足して感じるのだが、それを補って余りあるほど中高域の質に差があることからそちらを選択される方も多いようだ。
バランスを重視するか、中高域の質を重視するかで判断することになる。

FE103NV を Online Store で見る

FF105WK はどうか

FF105WK は FE103NV よりもさらに奥行寸法が深い。これも取り付けられた例があるのだが、さすがにオススメはできない。取り付けた場合、P1000K よりも中高域は美しいが FE103系よりは穏やかにスッっと伸びる中高音となる。試聴した方の中にはこれを気に入る方もいらしたが FF105WK をあえてこのエンクロージャーで使うメリットは少ないだろう。ちなみに FE103En や FE103NV 用に設計されたトールボーイ型バックロードホーンになると FF105WK ではまず合わない。これは明確にお勧めしない。

ステップアップの最初のモデルとして

P1000-BH は派手さは無いもののバックロードホーンの良さをソツなく垣間見せてくれる。ただし「これぞバックロード」という音ではないのも事実だ。このモデルだけをもって「バックロードは…」と語れるものではない。メリットの面ではもちろん、デメリットの面についてもそう言える。バックロードならではの量感とスピード感は垣間見えるもののまだまだと言う感じだ。大型のバックロードホーンにありがちなホーンの余分な響きも比較的少ない(完成品で調整済みであることもあるが)ので、調整に四苦八苦することもない。バックロードならではのメリットはまだまだこのようなものではないし、大型のバックロードではホーンの余計な鳴きのコントロールはある程度必要になることが多い。メリットもデメリットも、大型にすることでより顕著に現れることになるが、メリットを殺さないようにデメリットをコントロールすることができれば、本格的なサイズのバックロードホーンは他の形式では得られない体験ができる。時間とスペースに余裕があれば、これを入門としてさらに大型の本格的なホーンにも挑戦して頂きたい。
ただし体験したことがないにもかかわらず、大きなものにいきなり手を出すのはお勧めしない。 P1000-BH のような箱でお試しになられるか、弊社での試聴をお勧めしたい。誰もが気に入る完全無欠の… というわけではないことも確かである。

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