ホームシアターのサウンドは進化した?
実体験をせずに、ネット上のオーディオ&ビジュアル関連の記事ばかりから情報を得ていると、感覚がおかしくなってくる。記事によれば、フロントに設置する一体型のサラウンドスピーカーの進化は著しく、またAVアンプはピュアオーディオのアンプに肉薄しているらしい。私の記憶では、「ピュアオーディオのアンプに迫る」という謳い文句は30年くらい前にも見かけた。デジタルアンプはともかく、少なくともアナログアンプはこの数十年で概念が覆されるほどの進化を遂げたわけではないので、30年経っても同じ文句が褒め言葉として使われているということは…。
オーディオジャーナリズムのことを考えればこのような指摘は無粋だし、一応私自身もそれに近い業界にいる身なので、それは良しとしよう。
ホームシアターショップでの実体験
要するに記事を見るだけで知った気になっていてはいけないということが言いたかったのだ。自ら足を運び、実際に体験してみるのが大切である。
1年半前にavacさんでプロジェクターを観せていただいた。無音で視聴するということはないので、当然音も聴くことになる。
avacさんくらいになると流石に音も素晴らしく、「ホームシアターって素晴らしいな」という体験が得られる。ただ、何も買う気がないのに「一番いいやつ体験させてください」と訪問するのは一般的には気が引ける人が多いだろう。私は「プロジェクターを買う」という大義名分があったので、それこそ堂々と視聴を希望したけれども、ホームシアターについてよく知らない人、まだ買うかどうかもわからない人が、このレベルの体験をすることは一般的には難しいのではないだろうか。おそらくavacさんも「必ず買う人以外はお断り」ということはないと思うけれども、それでもいきなりこのレベルのショップを訪れるのは気が引ける人が多そうだ。そもそもこうしたことを体験できる場があることを知らない人が圧倒的多数なのかもしないが。
量販店ではテレビが主役
一方、気軽に体験できる、あるいはたまたま歩いていて目にすることがあるのは、常にオープンになっている量販店の体験スペースだろう。個室になっているわけではないし、店員さんが常駐しているわけでもないので、気軽に腰掛けて大きなテレビとサラウンドの組み合わせを体験できる。最近は「暗い部屋でプロジェクター」というよりも「明るい部屋でテレビ」というタイプのデモが多いようだ。日常のリビングの延長上にある、ちょっと大きいテレビ。その方が現実的と言えるけれども、「暗い部屋で映画」という「非日常」を生活に持ち込むのがホームシアターの醍醐味だとすれば、少し寂しい気もする。暗い部屋での大画面は家族の理解という観点からすると「そんなの無理」感が強い。明るいリビングでの大きいテレビの方が現実的な提案なのは明らかなのだが。
テレビは大画面化が進み、かつては数百万円という価格帯だったものが信じられないほどの低価格になった。それでも50インチ程度のモデルの激安具合からすれば、80インチ超のモデルはまだまだ高価なのだが。
量販店のホームシアターのデモ:その実態は?
量販店のデモコーナーで気になるのは視聴距離だ。かなり攻めた近さに視聴ポイントが定められていることが多いと感じる。お店のスペースを考えると、「適切な視聴距離」よりも「近くで迫力を」という方向に振るのもやむを得ないが、視力の良い人間からすると、あの距離(80インチを1.5mとか)だと、4Kのデモ映像ならいざ知らず、画質の粗は結構目につく。大きければ画質がどうこうというニーズは少数派なのだろう。
そして肝心の音にはさらに驚愕する。残念ながら「本当にこれで良いのだろうか….」というレベル。私の感覚は一般レベルとは乖離してしまっていると思われるので、話半分..というか、話四分の一くらいで受け取ってもらいたいところなのだが、この音を聴いて「ホームシアターってすごい」「うちにもホームシアターが欲しい」と思う人は果たしているのだろうか。上とか後ろからも音が聴こえる新鮮さ…訴求ポイントはそれだけかもしれない。明るい部屋で、しかもあの音。果たしてホームシアターならではの没入感が、あのクオリティで得られるのだろうか。
量販店のピュアオーディオコーナー
ホームシアターに限らず、ピュアオーディオでもこの状況は似通っている。量販店のオーディオコーナーでズラっと並んでいるスピーカーから出る音は、スピーカーの実力の半分、感覚的には四分の一も出せていないと感じる。ペア50万円以上するスピーカーの本当の音があのレベルだとしたら、それは問題だろう。売り場としての様々な制約があるとはいえ、これはこれで考えさせられる現実だ。
入店のしづらさはあるかもしれないが、オーディオを体験するのであれば、できる限り専門店に行ってほしい。気持ち的にそれは難しい…という場合にお勧めの量販店はやはりノジマさんだろうか。ノジマさんは量販店ではあるけれども「オーディオスクエア」という名称の、区切られた空間を備えた店舗がある。「区切られた」というのが結構重要で、それだけでも周囲の騒音は少し軽減される。さらにその中に試聴室があるので試聴環境は良い。ショッピングモール内にある店舗も多く、家族と出かけたついでに「ちょっと失礼」的な感じで立ち寄ることができるのもポイントだ。
ホームシアターも専門店で体験を
ホームシアターを考えている人も、ぜひ勇気を出して専門店に行ってもらいたい。まずは良いものを体験することが重要だ。くれぐれも量販店の一角で行われているデモを本物だと勘違いしないようにしてほしい。これは展示してある製品の問題ではない。同じ製品によるデモだとしても、セッティング次第では違ったパフォーマンスを体験できるはずだ。その上で、ご予算と、ご自身の求めるレベルを考慮して選択するのが良い。ただ、この時に買うのだけは量販店で…というのはできればやめてほしいとも思う。「一度体験させてもらったのならそこで買え!」と言うつもりはないけれども、最低限の義理は果たしてほしいなぁとも思う。長い目で見た時に、誰から買ったかということが重要になってくることもあるだろう。
より個性的なサウンドを求める時は
一般に売られているようなスピーカーではちょっと…というような場合には我が社、エクスペリエンス・スピーカー・ファクトリーに相談してみることもご検討いただきたい。音質面でもそうだし、見た目や使い勝手についてもだ。
「お掃除ロボットが通るから床にスピーカーが置けない」といった悩みでも構わないし、「いかにもスピーカーがありますというのはインテリア的に受け入れられない」といった理由でも構わない。
壁に埋め込むための工事や配線を隠蔽する工事も可能だ。
弊社に対しては専門店以上の近寄り難さを感じるかもしれないけれども、実際に尋ねるとそんなことはないとわかります。是非お気軽にお声がけをお願いしたい。