FOSTEXからフィルムコンデンサCXシリーズが登場
Fostexから登場した新しいコンデンサCXシリーズ。CSシリーズが僅かな在庫を残して終了し、定番とも言えるスーパーツィーターのアドオン接続用のコンデンサがFostexのラインアップから無くなって若干の不安があったところへの登場となった。
しかし、見た目はさることながら、価格面においてもCSと比較して高級感はない。
CSシリーズは青色の外装に金色のラベル、リード線もいかにも高級そうな金メッキの単線だ。
一方のCXシリーズは黒色でいかにも業務用然とした佇まい。グレーの文字で地味にロゴや文字がプリントされている。リード線もなんの変哲もない。価格も30%以上安く、普通に考えれば「新モデルが出たから新しい方に交換しよう」とはなりにくいモデルと言える。
容量 | CSシリーズ型番/標準価格(税込) | CXシリーズ型番/標準価格(税込) |
---|---|---|
0.15μF | CS0.15/¥3,300 | – |
0.22μF | CA0.22/¥3,520 | CX 0.22/¥2,420 |
0.33μF | CS0.33*/¥3,630 | CX 0.33 /¥2,640 |
0.47μF | CS0.47*/¥3,850 | CX 0.47/¥2,860 |
0.68μF | CS0.68*/¥4,400 | CX 0.68/¥3,080 |
1.0μF | CS1.0*/¥5,060 | CX 1.0/¥3,300 |
1.5μF | CS1.5*/¥5,500 | CX 1.5/¥3,520 |
2.2μF | CS2.2*/¥6,600 | CX 2.2/¥3,740 |
3.3μF | CS3.3*/¥8,580 | – |
近年のFE_SS-HPとおなじ傾向? CXシリーズの音
近年のフォステクスといえば、良い意味でも悪い意味でも、従来のユーザーの期待を裏切ってきたと言える。
FEシリーズの限定モデル「SS-HP」は最たる例だろう。右肩上がりの“切れ味鋭い”高域は文字通り鳴りを潜め、良く言えばピュアで美しく、悪くいえばその音は精細を欠く(ように聴こえてしまう)。これについては過去にもいくつかの記事で触れている。
過去のモデルは強大な磁気回路によるパワーで限界まで振動板を動かし、これが聴感上のダイナミックレンジを極大にした。この手のモデルでしか聴くことのできない鮮烈なサウンドは唯一無二と言える。
一方の「SS-HP」では、磁気回路によるパワーはむしろ振動板の動きを止めることに使われているように聴こえる。鮮烈なサウンドは大人しく、綺麗に鳴る。限定FEでしか聴くことができなかった鮮烈サウンドが後退したことは一部のファンには不満以外のなにものでもなかった。
「これならFEはいらないのでは?」と、唯一無二の価値を失ったFEに、ともすれば失望する声すら聞こえる。
個人的に、そのような声が上がることも理解できる。だが一方で、このことによってはじめてFEの価値を認める声があるのも事実で、SS-HPにフルレンジの理想を聴いているユーザーもいるほどだ。後退したとは言え、この手のモデルでしか味わうことのできないスピード感は健在だ。これまでの限定FEで使っていた箱への換装では難しいかもしれないが、きちんと設計されたエンクロージャーで使えば、従来のFEで味わうことができたスピード感とダイナミックレンジに加え、それと両立した状態で綺麗な中高音を聴くことができる。設計を調整すれば、そこにはさらにズシリとくる重厚感も加わる。(20cmモデルはボイスコイル径も従来とは違う)
コンデンサの話から逸れてしまったが、これらのSS-HPシリーズ、FE108SS-HP, FE168SS-HP, FE208SS-HP にみられる傾向と、CXシリーズにみられる音の傾向は似ているようにも思われる。
CSシリーズの音はお淑やか? ツィーター本来の音を聴こう
ともすれば少し誇張されたような、作られた高域の輝きや煌びやかさを感じることもあったCSに対して、CXのコンデンサを使ってツィーターをアドオンしたフルレンジではこうした派手さがなくなり、落ち着いた雰囲気の音を聴ける。煌びやかさではなく、お淑やかさとでも言おうか。CXシリーズで感じるこの雰囲気はSS-HPに感じられた雰囲気に通じるものがあるのだ。
メーカーの説明によれば、CXシリーズは「ツィーターのアドオン使用時、ツィーター本来の音響性能を最大限発揮できるよう、コンデンサ固有の音質による影響を考慮した」とある。
この傾向は、私自身が比較試聴した際にも十分に感じ取ることができた。まさにツィーターそのものの音を聴いている感覚だ。冒頭で述べたように、CXシリーズは「新モデルが出たから新しい方に交換しよう」と、どんなユーザーにでもお薦めできるような類の製品ではないが、目指す方向性によっては、このモデルの方が適しているユーザーもいるだろう。
CSを使って、その他の部分で何かを抑えてるような使い方(抑制方向の調整)をしているユーザーはCXによってその抑えている何かを取り払うことができるかもしれない。これで何かが向上するとかそういうことではないが、よりシンプルなシステムにすることはできる。
CSよりは若干お求めやすい価格設定になっているので、これらを踏まえて「どんなものか?」と気になる方は実際に試してみるのも良いのではないだろうか。