「せっかく良いスピーカーを買ったのに、なんとなく音がぼやけて聞こえる…」「低音が出過ぎてしまう…」そんなお悩みはないでしょうか?
そのような問題はスピーカーの置き方で解決することができるかもしれません。今回は中でも、「スピーカースタンド」にフォーカスして考えてみたいとおもいます。
スピーカーは、ただ置けば良いというものではありません。そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、適切な設置が不可欠です。そこで重要な役割を果たすのがスピーカースタンドです。スピーカーが秘めている真の音質を引き出す、あるいはお好みの音響状態を整えるためのスタンドの選び方から設置までを簡単にご案内します。
スピーカーとスタンドの基礎知識:なぜスタンドで音質が変わるのか?
「たかが台座でしょ?」と思う方もいるかもしれません。しかし、スピーカースタンドは音質に大きな影響を与えます。影響を与える理由の中で、もっとも重要なのは「不要な振動の抑制」と「リスニングポジションの最適化」の2つです。
不要な振動の抑制
スピーカーは音を出す際に、筐体(ボディ)自体も振動しています。この振動が床や棚などの設置面に伝わると、床や棚も共振してしまい、スピーカー本来のクリアなサウンドを濁らせてしまいます。スピーカースタンドは、この不要な振動を吸収・遮断し、音の濁りを防ぐ役割を担います。
リスニングポジションの最適化
スピーカーから最も良い音を聴くには、ツィーター(高音域を出す部分)が耳の高さに来るように設置するのが理想とされています。中にはツィーターとそのすぐ下の帯域を担うスピーカーユニットの中心を耳の高さにするように設計されたモデルもあります。いずれにしても、それぞれのスピーカーは特定の高さで聴くことを前提に設計されています。スピーカー スタンドを使えば、この理想的な高さを実現し、よりクリアで音像が明確なサウンドを楽しむことができます。
スタンドの種類とそれぞれの特徴
スピーカー スタンドには、主に以下の2種類があります。
- フロアスタンド: 床に直接置いて使うタイプで、一般的なブックシェルフ型スピーカーなどに使用します。リスニングポジションに合わせた高さ調整がしやすく、安定性に優れています。
- デスクトップスタンド: デスクの上にスピーカーを置く際に使うタイプです。PCスピーカーなど、限られたスペースで使う場合に重宝します。角度調整ができるものもあり、デスクトップ環境での音質向上に役立ちます。

スピーカーの種類別スタンド選びのポイント
お使いのスピーカーの種類によって、選ぶべきスタンドのタイプや注意点が変わってきます。
ブックシェルフ型スピーカー向け
最もスタンドの恩恵を受けやすいのが、このタイプのスピーカーです。
- 高さ: スピーカーが適切な高さになるようなスタンドを選択します。「適切な高さ」は取扱説明書で確認できることもありますが、不明な場合にはツィーター(高域を再生する部分)が耳の高さに来るようなスタンドを選びます。
- 耐荷重: 必ずスピーカーの重量に耐えられるスタンドを選んでください。転倒防止のためにも重要です。
- 天板サイズ: スピーカーの底面とほぼ同じか、わずかに小さい程度の天板サイズが安定性と見た目のバランスが良いです。スピーカーの底板よりも大きいと見た目のバランスが崩れますし、場合によっては反射の問題が起こります。
- 安定性: 重心の低いものや、しっかりとした構造のものを選びましょう。転倒はスピーカーの破損に直結します。
- 共振対策: 一部のスタンドには、内部に砂や鉛などを充填して質量を増し、共振を抑えるタイプもあります。音質をさらに追求したい場合は検討してみましょう。
トールボーイ型スピーカー向け
基本的に床に自立するためスタンドは不要です。安定性向上のためにスパイク(後述)を使用することがあります。スパイクは、床との接触面積を減らすことで不要な振動を抑制し、音のクリアさを向上させる効果が期待できます。
デスクトップスピーカー向け
デスク上での使用がメインとなるため、コンパクトさが求められます。
- 角度調整機能: デスクに座った際に、スピーカーが耳の方向を向くように角度をつけられるタイプがおすすめです。
- デスクへの振動対策: デスク自体が共鳴しないよう、しっかりとした造りのものを選びましょう。
失敗しないための「スピーカースタンド」選びチェックリスト
いざスタンドを選ぶとなると、何を基準にすればいいか迷ってしまうかもしれません。ここで紹介するチェックリストで、あなたにぴったりのスタンドを見つけましょう。
- 高さ: 最も重要です。リスニングポジション(普段スピーカーを聴く位置)に座ったときに、スピーカーのツイーター(またはそのスピーカーの適切な位置)が耳の高さに来るように計算しましょう。
- 耐荷重: あなたのスピーカーの重さをしっかり支えられるスタンドを選びましょう。パッケージや製品説明に記載されています。
- 安定性: グラつきがなく、しっかりとした安定感があるかを確認しましょう。重いスピーカーを乗せる場合は特に重要です。
- 素材:どの素材を選択してもその素材の固有音は加わります。その固有音を積極的に利用するのか、できる限り固有音を排除するのかで何を選ぶのかは変わってきますが、固有音は排除するのが基本です。とは言え、どうしても音は加わってしまいますので、加わるのであればどのような傾向の響きが「ましなのか」ということになります。
- デザイン・見た目: スピーカーや部屋のインテリアと調和するデザインを選びましょう。愛着が持てるものが一番です。
- 予算: エントリークラスからハイエンドまで幅広い価格帯があります。まずは予算を決めて、その中で最適なものを見つけるのが賢明です。見た目や性能に妥協したくない場合はオーダーメイドという選択肢もあります。その場合は弊社までご相談ください。
- ケーブルの処理: ケーブルをスタンドの支柱内部に通せるなど、配線をすっきりさせられる構造だと見た目もスマートです。
「スピーカースタンド」設置とセッティングのコツ
スピーカー スタンドを手に入れたら、次に重要なのが正しい設置とセッティングです。
設置場所の選定
- 壁からの距離: スピーカーと壁の距離が近すぎると、低音が過剰に響き、音がこもりがちになります。部屋の広さにもよりますが、ある程度の距離を保つようにしましょう。逆に積極的に反射を利用する場合もあります。量感を重視する場合には敢えて近付けることもあります。
- 左右対称の配置: 左右のスピーカーは、リスニングポジションから等距離になるように、左右対称に配置するのが基本です。
- 家具の配置: スピーカーとリスニングポジションの間に大きな家具があると、音が遮られたり反射したりして音質を損なう可能性があります。できるだけ障害物のない配置を心がけましょう。
とは言え、何を優先すべきかはなかなか難しい問題です。基本的なセオリーを全て満たした状態でセッティングするのは、特にリビングルームなどに設置する場合は不可能かもしれません。
限られた条件のなかで完璧なセッティングをしたい場合には専門家に相談することも検討してみてください。弊社ではセッティングに関するご相談をお受けしたり、出張で対応することも可能です。お気軽にお問い合わせください。
スパイクの活用
スピーカー スタンドの脚部やスピーカー本体の底面にスパイクを取り付けることで、スタンドと床、またはスピーカーとスタンドの間の接地面積を最小限にし、不要な振動が伝わるのを防ぎます。ただし、使い方によっては逆効果になることもあります。「スパイクを使っておけばOK」ということではありませんので、必ず使用前後で音がどう変わったかを確認して使用するかしないかを判断するようにしましょう。
水平の確認
スピーカースタンドが水平に設置されているか、水準器を使って確認しましょう。傾いていると、音の定位がずれたり、バランスが悪くなったりする可能性があります。
ケーブルの取り回し
スピーカーケーブルは、できるだけスタンドの内部を通したり、きれいにまとめて隠したりすると、見た目がすっきりするだけでなく、さまざまな外部からの悪影響を受けにくくなり、音質にも良い影響を与えることがあります。
実際に音を聴きながら調整
最終的には、実際に音楽を聴きながら微調整を行うことが大切です。少しずつスピーカーの角度を変えたり、リスニングポジションを前後させてみたりして、最も心地よく聴こえるポイントを見つけましょう。レーザーポインターやレーザー墨出器などを使用して丁寧に調整すると、あるポイントで「いきなり音が良くなる」ようなことも起こります。
大体の設置場所が決まったら、最終的にはかなり細かい調整まできちんと行うこともお勧めです。
おすすめ「スピーカースタンド」紹介
ここでは、いくつかおすすめのスピーカー スタンドをご紹介します。あなたのスピーカーとリスニング環境に合わせて選んでみてください。
- ハヤミ工産 SB-6x: ローエンドのベストセラーです。必要最低限の機能は備えながら、なんと言っても安価なのが魅力です。こんなに大きなものがAmazonでは送料も無料です。高さのバリエーションも豊富です。[SB-61(15cm)、SB-63(30cm)、SB-65(45cm)、SB-67(60cm)など]
質量は60cmタイプで約3.54kg(1台)と軽量ですが、「高さ調整」というスピーカースタンドに求められる最も重要な条件はこのスタンドで満たすことができます。材料は「木材」としか書かれていませんがMDFではないでしょうか。ハヤミ工産さんのラインアップは非常に多様ですので用途に応じて他のモデルも検討されると良いでしょう。オーダーメイドでは到底実現できないコスパが魅力です。 - TAOC HST-60HB: スタンドといえばTAOCというほど安心のブランドです。その中でもハイエンドのモデルがこのHST-60HB。振動抑制が徹底的に図られ、質量も23kg(1台)と重量級です。このモデルは見た目もかなりゴツい印象ですが、TAOCにはBST Series という、もう少しすっきりとしたデザインのモデルもあります、そちらは約10kg程度と少し軽くはなりますが、それでも十分な質量があり、高さや天板サイズのバリエーションもあります。独自の制振技術によって引き締まったクリアな音が期待できます。
- エクスペリエンスのオーダーメイド:最後に手前味噌ながら弊社のスタンド。シリーズ化されているものはなく、基本的にはそれぞれのお客様のオーダーに応じての製作となります。高さ、天板サイズ、カラー、質量、無限のバリエーションが考えられます。既製品にコレといったものが見つからない場合には是非ご相談ください。
スピーカースタンドでスピーカーのポテンシャルを最大限に引き出そう!
スピーカー スタンドは、単なるスピーカーの台座ではありません。不要な振動を抑え、リスニングポジションを最適化することで、あなたのスピーカーが持つ真の音質を引き出し、より豊かな音楽体験をもたらしてくれる、非常に重要なオーディオパーツです。
この記事を参考に、あなたのスピーカーにぴったりのスタンドを見つけて、感動的なサウンドを体験してください。