FOSTEX 6.5″ 2way Project Phase 3 (Woofer 2) Text 1/3

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(荒谷) 前回はウーハーの磁気回路とダンパー、エッジの話をしました。今回は2種類の磁極の測定結果の比較、レーザードップラー振動系による動きの観察、そして振動板の材料がテーマとなります。

(乙訓) 今回もフォスター電機 フォステクス カンパニー乙訓、エクスペリエンス 荒谷、フォステクス カンパニー 玉置 の3名でお送りします。よろしくお願いします。

(乙訓) 今回も資料をご覧いただきながら説明して、その後試聴に入りたいと思います。

(荒谷) 前回は試聴よりも説明の方が楽しかったという話もありますが?

(会場) (笑)

(乙訓) それでもスピーカーですから、聴いていただきたいと思います。

(荒谷) こちらが今日のテーマです。

 

【 今回の内容 】

二種類の磁極
 アルニコ磁石(内磁型)とフェライト磁石(外磁型)、磁石の異なるスピーカーについて様々な測定を通してそれぞれの特徴を捉える

周波数特性の検証
 無響室にて出力音圧特性(f特)等を測定する

振動の様子を観察する
 レーザードップラー振動計で振動板の動きを観察する

振動板の材料は?

 

(荒谷) 前回も磁気回路についてはやったのですが、やり残した部分をやっていきたいと思います。前回予定としてお話ししていたツィーターは次回になります。

(乙訓) 来月やる分の試作部品が今日出荷されたとの連絡がきましたのでツィーターは次回ということでお願いします。

(荒谷) 最初は何からいきますか?

(乙訓) 先ほどまで会場で鳴っていたのはフェライトの外磁型磁気回路をもつ16cmウーハー W160F-HR(開発中) をフォステクスのバスレフ型のボックス BK165WB に入れたものです。BK165WB はマイナーチェンジモデルが間も無く発売される予定です。

(荒谷) BK165WB 16cmフルレンジ(FFシリーズ)用のオーソドックスなバスレフです。それに W160F-HR を入れている状態です。前回は完成していなかった、2枚重ねのフェライトマグネットが付いているウーハーです。

(乙訓) それをそのままスルーで線を繋いだ状態です。これでちょっと聴いてみましょう。

(荒谷) この個体はまだ出来上がってからそれほど経っていませんよね?

(乙訓) まだ2週間くらいです。動作が十分ではありません。測定をして少し動かしてここにきた段階です。先月聴いて頂いた内示型(アルニコマグネット)の W160A-HR と比べるとまだ熟成できていません。

  • W160F-HR をスルーで試聴】

♪ Ready To Love / Tuck & Patti

 

(乙訓) 前回聴いていただいたアルニコとフェライトは磁気回路以外は同じでした。磁気回路が違うことによってどのような違いがあるのかが分かります。

 

資料-1

(乙訓) こちらが T/Sパラメーターです。先月は外磁の W160F-HR はダンパーとボイスコイルしかありませんでした。今回は完成したもので測定してあります。

(荒谷) 上から現行のウーハー2機種、開発中のウーハー2機種、過去の限定と現行のフルレンジ2機種です。前回はW160A-HR Fs33.7Hz に驚きました。今回も同じように W160F-HR 35.1Hz 16cmウーハーとしてはかなり低いです。

(乙訓) マグネット以外の部品の仕様は同じです。

(荒谷) ですので、今回も限界まで低くした状態の Fs ということですね。今回は注目したいのは、やはりW160F-HR の BL 11.1 ではないでしょうか。

(乙訓) W160A-HR W160F-HR のボイスコイルは同じですから単純に磁力の違いです。BL が高ければ良いという思想だとすると W160F-HR の一択ということになります。

(荒谷) そうですね。あとは、Qts 0.18 ですね。フォステクスファンのバックロード好きの方はどうしても Qts の低さに目がいってしまいますね。先ほど資料を見せて頂いて、私もそこだけ見て「バックロードに使えそうですね」なんて話をしたら、「また数字に踊らされて」と言われてしまったところです。Mms をみればフルレンジと比べるとかなり重いですから、無理ですねなんて話をしていました。その辺がパラメーターを見て気になるところです。

(乙訓) そうですね。これを見る限りでは磁気回路も強くて、「バックロードに入れたらどうなるのだろう?」と考えるのは理解できます。ただこの数値から、「重い振動系がよく動く状態」ということが分かります。このようなユニットをバックロードに入れてもあまりいい結果は出ません。

(荒谷) 「ドロ〜ン」という感じですか?

(乙訓) 「ドロ〜ン」という感じです。とにかく、出なくてもいい音までがたくさん出てしまいます。低域の共鳴が大きく出てしまいます。このようなウーハーはバスレフのキャビネットでバランスを取ろうとています。中高域以上はおとなしくさがっていますので、結果として補強しても仕方がない帯域ばかりが出てきてしまうことになります。ただ、これだけ大きな磁石で BL がとれる磁気回路ですから、これでフルレンジを作ったらどうなるのかということは考えてしまいます。

(荒谷) そう思ってしまいますね。

(乙訓) 今回作っているのはウーハーですので、ボイスコイルの巻幅を十分にとり、振動板の剛性も十分に確保しました。その結果としてこのような形になっています。フルレンジを作る場合には中高域の音圧を確保する必要があります。そうなると、ボイスコイルの巻幅はあまりとりません。振動系は剛性を確保しつつ、できるだけ軽くすることになります。そうすることでウーハーとは全く性格の異なる「フルレンジ」に変わっていきます。そのような可能性を秘めていますので、フェライトタイプはわくわくしながら設計しています。

(荒谷) 16cmフルレンジのバックロード向けのスペシャルバージョンはかなり長期間出ていませんから、待たれている方も多いと聞きます。そのモデルにつながっていきそうですね。

(乙訓) フェライトのタイプの磁気回路はそれに活用できると考えながら設計しています。

資料-2

(乙訓) 資料-2 はボイスコイルの中心からの距離を横軸、BL を縦軸として複数のモデルを比較したグラフです。赤いグラフがダブルマグネットの W160F-HR で圧倒的に BL が高くなっています。これは測定した結果ですが、この結果からどのような音響性能になっているのかというところまではまだいっていません。

 

資料-3

(乙訓) 資料-3 KMS です。CMS の逆数になります。振動系の仕様が同じですので、赤の W160F-HR と 青の W160A-HR ではほとんど同じ値になります。オレンジのグラフの FW168HR は振幅が大きくなるにつれて急激に動きにくくなっているのが分かります。

(荒谷) このグラフも横軸は先ほど同じで振幅量、縦軸の KMS は「動きにくさ」ということになりますので、現行モデルの FW168HR と比較して開発中の両モデルは「振幅しても動きにくくならない」ということが分かります。

資料-4

(乙訓) 資料-4 は入力電圧(横軸)と振幅量(縦軸)です。30Hz における測定値です。前回もお話したとおり途中から測定値が上下の両端に到達してしまっている部分は測定の限界を超えている部分です。入力電圧が高い部分ではすでに設計値の限界にまで到達してしまっています。

(荒谷) 30Hz における振幅量のグラフですね。横軸がボルテージ、縦軸が振幅量ということになります。計測用のレーザーが微小用の信号を使っているので、右側は計測できる範囲を超えているということですね。

(乙訓) 実際にはここまでの入力を入れることはありません。

 

資料-5

(乙訓) 資料-5 は周波数特性です。無響室における出力音圧特性、いわゆる f特 です。サイン波をいれた場合の出力を測定しています。これは2機種の測定結果を重ねたもので、青がアルニコの W160A-HR、赤がフェライトの W160F-HR です。歪みの特性はどこがどうなっているのか、じっくり見なければわからないほど傾向に大きな差はありません。

(荒谷) 周波数特定をみると 100Hz あたりで両者の音圧が逆転しています。

(乙訓) 赤の外磁型、磁力が強い方は低域で制動がかかっていて音圧が低いです。その後は磁力が強いので中高域以上の音圧は高くなっています。

(荒谷) イメージ通りです。

(乙訓) イメージというよりも教科書どおりです。BL が強いから音圧が出るという部分と、BL が強いから制動がかかって低音が出ないという部分です。これをみると、「バックロード向きですね」となります。ただこれはあくまでももう一方と比較したからそう見えるに過ぎません。バックロードで使うスピーカーはこの 1kHz 以上からはほとんど 100dB を下回らないような状態になります。そこまできて「バックロード専用」というレベルです。 FE208-Sol の特性を見ると次元が違います。

(荒谷) 今回の「アルニコ」と「フェライト2枚重ね」のユニットの BL の差という部分がこの特性に表れています。

(乙訓) 気になることはありますか?

(荒谷) 6kHz 付近のピークですね。前回は W160A-HR の特性だけでしたが、W160F-HR にも出ていますね。

(乙訓) これについては後ほど説明します。

 

資料-6

(乙訓) 資料-6 はインピーダンスカーブです。前回お見せした FW168HS にも鋭いピークがありましたが、W160F-HR にもピークがあります。両者はヨークのポール部に穴が空いていて通気しています。通気していない W160A-HR との差がこのインピーダンスカーブに明らかに出ました。振動板の後ろ側が密閉されているよりは通気している方が非常に動きやすくなるので、このようなカーブになります。

(荒谷) FW168HS はピークが 190Ω くらいと記憶していたのですが、これは 220Ω くらいありますね。一方の W160A-HR 55Ωくらいです。

(乙訓) このインピーダンスの差は Qts に直結しています。その穴を塞いで通気をなくしたらどうなるのか。つまり穴が空いていた方が良い部分と、塞いだ方が良い部分は聴きながら、インピーダンスカーブの変化と Qts の変化も見て検証して報告したいと思います。低域における振動系の動きは非常に重要ですのでここは検討しなければなりません。振動板は動かせばいいかというとそうではなく、動かない方がいい時もあります。振幅している限り、時期回路の中でコイルが行ったり来たり忙しく動いている状態になります。低域で大きく動いてしまうことで、上の帯域の細かい動きがお留守の状態になってしまいます。混変調を起こしててしまいます。ひどい時はボイスコイルがギャップから外れてしまい音になりません。振幅は適正な状態でなくてはならず、動かし過ぎてはいけません。

(荒谷) その他に分かるのは、高域にかけてのインピーダンス上昇が抑えられていて、グラフの右端で 20Ω くらいということです。これは銅キャップの効果ですね。

 


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