FOSTEX 6.5″ 2way Project Phase 2 (Woofer 1) Text 1/4

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(荒谷) 今日は Fostex 6.5 2way Project Phase 2 ということでウーハーにフォーカスしてやっていきたいと思います。前回の第1回は Fostex 6.5 2way Project はどんなものなのか、全体を設計していく中でどのようなことを考えながら進めていくのかということを概論を含めてフォステクスの乙訓さんにお話して頂きました。その開発も少しずつ進んでおり、今回はウーハーの開発の進捗を中心にご案内します。前回よりさらにも突っ込んだ内容になっていきます。
今日もフォステクスから乙訓さんに来ていただいています。よろしくお願いします。
また、今日はもう一名同じくフォステクスから玉置さんにも来ていただきました。

(乙訓) 玉置はこれからの未来を背負って立つ若い人材です。これまで年配の人間がやってきたことに彼が得意とする「測定し解析する」といった部分も加えてやっていきたいと思います。これまでも測定や解析を軽視したり無視したりといったことはありませんでしたが、聴いたり、触ったりという感覚に重きを置いていました。彼は測定や解析したものがどのようなパフォーマンスを見せるのかということを先入観がなく聴くことができるので非常に頼もしいです。
今回の発表資料も作ってもらいました。試聴だけでは聴くだけではなく、ふだんスピーカー設計者がどのようなことをやっているのかという過程をご覧頂きたいと思います。

 

【 今回の内容 】

磁極の設計
各部の寸法を調整し、磁気回路の適正化を図る

組立図
 磁気回路、フレーム、振動形部品を組み立てた断面図を作図する

動作設計
 振動系(ボイスコイル -Spider-Body-Surround)の動作状態をスピーカー測定/評価システムを用いて測定する

 

(乙訓) 今日ここにある W160A-HR ES1 (Engineering Sample 1) はまだ「音が出た」という段階のものです。バランスを取ったりグレードアップしたりというのはこれからになります。
それを踏まえて、現行機種の FW168HS FW168HR と比べて、どのような特徴があるのかというのを聴いていただきます。

(荒谷) まずは画面での説明ですね。最初は「磁極の設計」とあります。これは磁気回路 ということですね。

(乙訓) 磁気回路はドライバーの力の源です。自動車でいえばエンジンに相当する部分です。今回のプロジェクトではアルニコの内磁型で作るところからスタートしました。質を求めてアルニコの磁気回路を使うといいのではないか? どこがいいのか? 本当にそうなのだろうか? 検討しながら作っているところです。

 

資料-1

 

 

(乙訓) まずこれ(資料-1)は現行モデルの FW168HSFW168-HR、それから今回検討している2モデルの磁気回路のシミュレーション結果と実測値です。左の列の山のような形をしたグラフは社内ソフトによるシミュレーション結果です。磁束密度がプレートの対抗幅に対してどのように分布をしているかを表しています。縦軸が磁束密度、横軸は中央より左が振動板が奥に引っ込む方向、中央より右が振動板が手前に出てくる方向です。磁気回路の鉄がある部分からボイスコイルが外れてると磁束は弱くなることがわかります。磁束が強い部分の幅と高さ(強さ)も表れています。4モデルとも同様にプレートという磁気回路を構成する部品の幅(厚み)と同じくらいの幅で一定の磁束密度が得られています。平均して力がかかっている部分が大切です。このシミュレーションではプレートの間を動く限りは出す力はきっと同じくらいであろうということが分かります。
実際に作って測定した結果が「Measurement Result」の部分です。シミュレーション値と完全に一致しているわけではありませんが、それは大きな問題ではありません。シミュレーションで大切なのは、磁束密度が飽和する部分ができて十分な性能が出ないようなことがないか確認することです。この結果を見る限りギャップの所では十分に磁束密度が上がっていて、問題ないことが分かります。実測値をみると磁束密度の数値は高いものから低いものまで様々ですが、これは一喜一憂するようなものではありません。ただ、高いものは調整して下げられますが低いものは上げられませんので、高いほうが良いということはあります。

(荒谷) 質問があるのですがいいですか? シミュレーションの磁気回路の図をみるとギャップの広さが様々で、例えば FW168HS は広く、FW168HR は狭く見えるのですが、図の縮尺は全部同じですか?

(玉置) この図の縮尺は全部同じではないです。拡大の仕方がまちまちです。

(荒谷) わかりました。それからW160F-HR というモデルがありますが、これは今日は持ってきていないモデルですね?

(乙訓) これはまだ持ってきていないです。アルニコを検討していたらフェライトの外磁型も検討してみたくなったと前回お話していましたが、フェライトの方はまだ磁気回路までができた段階です。

(荒谷) 「Measurement Result」があるのは磁気回路まではできているからなのですね。これ(W160F-HR)が一番磁束密度が高いので。

(乙訓) これはシミュレーション値も一番高かったです。

(荒谷) マグネットがダブルで付いているわけですもんね。

 

資料-2

(乙訓) こちら(資料-2)はフォスター電機の試作フロアにある着磁機で着磁しているところです。

(荒谷) スピーカーは組み立ての時のマグネットは磁力のない「焼物」の状態で、組み上がってからこちら(資料-2の左側の写真)のような機械で着磁することではじめて磁石になります。その作業をしているところですね。

(乙訓) 資料-2 の中央の写真では磁化したものの磁束密度をプローブセンサーで測定しているところです。この測定方法は昔から変わっていなくて、細いプローブを隙間にいれて測定します。深さによって磁束密度は異なりますから、高いところ(ピーク)を測定します。磁束密度は円周のうちの8箇所を測定して平均値を出します。

(荒谷) 真ん中の写真のポールピースにはまっているのは銅キャップですね? 「FE-Sol シリーズ」で使用されている「銅キャップ」というのがこちらです。中身を見る機会は少ないと思いますので。銅キャップも磁気回路の中では重要な役割を担っているわけですよね?

(乙訓) 銅キャップはコストがかかるので全てのモデルで使っているわけではありません。安価なモデルでは採用していません。これを採用する一番の理由は高域を綺麗にするためです。その他にも色々な理由がありますが高域が綺麗になって音がシャキっとします。

(荒谷) 磁気歪を電気に変えるとかそういうことでしたよね?

(玉置) そうです。磁気歪の原因となる逆起電力を銅キャップをつけることでショートさせる効果があります。

(乙訓) さらに付け加えれば、フルレンジに銅キャップが付いていると高域のインピーダンスの上昇が抑えられて高域の音圧が上がるという効果もあります。ウーハーにも採用しているのは質が上がることを期待しています。私が担当するモデルは比較的高価なモデルが多いので銅キャップが入っていることが多いです。

 

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